第八十六話 50年

最近のヨット、中古艇ですが、30年は珍しくなくなってきました。それで、現物を見ますと、船体には全く問題が無い。現役で乗られてきたヨットで、付属部品が適度に交換されてきたヨットなどは、これから一体どれだけ持つのか?それで、とりあえず、50年ぐらいは行きそうだ。50年経ってみると、もっと行けるのかもしれません。未だに、寿命は不明です。

ほったらかしではこうは行きませんが、それでも、先に寿命が来るのは、設置された機器とかの方ですね。ですから、こういう備品等を交換する事によって、ヨットは一体いつまで持つのか?デザイン的な物は変化しますので、好き嫌いも出るでしょう。でも、ヨットはクラシックスタイルも人気ですから、敢えて、こういう古いデザインを探して、それをレストアしようという方も少なくない。こういう意味では、車の世界とは全く違いますね。

50年、充分に持つとしたら、ヨットに対する考え方も変わります。ヨットの価格で家が買えると言いますが、普通の家は20年か30年か、ヨットは50年かもっと。車なんか10年もすれば価値は無い。しかも、ヨットは動くものだし、波の上を走るものだし、ストレスは相当なものです。家の耐震構造の比ではありません。それでも、50年とか持つんですから、たいしたもんです。そう考えれば、安いもんです。

50年持つと解れば、メインテナンスがさらに生きてきます。これまでは、価値は年式オンリーでした。でも、50年持つと解れば、メインテナンス次第で大きく差が出ます。ですから、例え古くても、手入れさえ良ければ、どおって事は無い。そういう事が欧米では解っているから、中古艇価格が高いのだろうと思います。どんなに手入れしても、20年程度で、駄目になるなら、手入れ次第での価格はあまり意味がありません。しかし、50年とかそれ以上長い寿命なら、手入れが多いに物を言う。そういう意味では、日本でも、手入れ次第で価格が違うという事を意識していかなければならないと思います。

そうなってきますと、みんな手入れしたくなります。手入しておけば、価格が違ってくるのなら、手入れをしておきたい。それで、日本のヨットがみんなきれいになっていく。そうなってほしいと思います。現状では、大雑把に言って、日本の平均レベルの手入れ具合は非常に劣ると言わざるを得ません。残念ながら。

業者に頼むとお金がかかる。それで、できる人は自分でやる。自分でやると、もっとヨットの事に詳しくなる。そうやってレベルが上がっていきます。そういう事が、次のヨットに買い換える時も、意識が違っていますね。自分のヨットがどうあるべきかも解っています。そうやって、みんなのレベルが上がると、ヨットの選択が変わり、見方が変わり、価値あるヨットかどうかも解るようになる。

やっぱり日本のヨット業界もまだまだ、これからですね。丁度、夜明けぐらいで、これからもっと時が経ちますと、もっと成熟していく。すると、日本にもいろんなヨットが入ってくる余地が出てくるのかもしれません。世間は不況の嵐、でも、そうこうしながら、アップ、ダウンしながら、ヨット界もようやく成熟期に入っていき、これからが面白くなる時期かと思います。

以前、SK25という古いヨットを数艇レストアしましたが、そういう時代ももっと来るでしょう。年式なんてあまり関係が無くなり、今の状態がどうか?それが重要になってくる。新しい方が必ずしも良いとは限らないし、古くても、気に入ったヨットを手に入れて、レストアしたりして新艇みたいにピカピカになります。もちろん、新艇も売れてもらわねが困りますが、これからは、自分のスタイルをきちんと持って、それに見合うコンセプトを新艇とか、中古艇とかで手に入れる。そういう時代になりつつあるのかなと思います。年式は無視はできませんが、考慮すべきの要素のひとつ程度になります。これから、成熟期、面白い時期になると思うのですが。

さて、それで、マリーナはと言いますと、相変わらずで、ここに以前から言ってきました、エンターテインメント性を考えて頂きたい。マリーナに居て、そこで楽しめるマリーナ。ヨットを出さなくても、そこで遊べるマリーナ、こういう事も一緒に発展していきますと、トータルで、面白い成熟期を迎える事ができると思います。あるオーナーの奥様ですが、一言、”マリーナに行っても楽しく無い”だから、行きたいとも思わないし、これではヨット界は広がらないと言われました。的を得た発言かと思いますね。 もともとヨットはご主人が好きで購入されたわけで、回りの家族はたいして興味は無い。そこで、マリーナが楽しいなら、マリーナにも来るだろうし、ヨットにも乗るでしょう。でも、そこが楽しく無いなら、来ない。これが日本の現状でしょうね。

欧米を見ますと、マリーナが楽しい。それで家族も来ます。小さな子供達もマリーナに来るし、来れば、ヨットにも乗ります。まあ、日本はまだまだこれからです。試行錯誤を繰り返しながら、夜明けを迎え、いよいよ成熟期に突入しようかという、ゆっくりしたペースです。じっくりと、発展を見守っていきたい。少なくとも、私が現役で働ける間に、成熟期の進化度合いを見たいですね。

それで、結論。重要な事は、まず現オーナーがヨットを楽しむ事、マリーナにエンターテインメント性ができる事、この二つが発展すれば、ヨット界は安泰です。今は各オーナーの自主性に任されています。それでは、なかなか発展しないのは当然かと思いますね。何とかしなければ!

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