第五十八話 気分こそ大事

ジャイアンツが優勝したようです。ファンの方は嬉しいでしょう。良い気分が味わえました。福岡のソフトバンクホークスは王監督が引退、昨今、監督でこれほど惜しまれた方はおられないような気がします。相撲は八百長問題とか、実は、あまり野球や相撲に興味は無いのですが、こういうスポーツはいろんな気分を味合わせてくれます。勝った時、負けた時、プロの技、自分でやるわけでは無いし、損得があるわけではありませんが、いろんな気分を味合わせてくれますから、そこが面白いのではないでしょうか?

結局は、どんな気分を味わえるか?これが最も大事な事で、成功を夢見頑張るのもその為かと思います。仕事も遊びも、全部気分。もちろん、仕事には実利がありますが、それに生きていく為に必要な事でもありますが、機械では無いので、どうしても気分を求めます。それが良い気分なら、仕事でも面白い。良い気分でないなら、遊びでも面白く無いという事になります。

ヨット遊びにも気分を求めます。スピードを求めるのは、結局はその時の気分を味わいたいからでしょう。レースに出るのも優勝気分を味わいたい。勝てなくても、あのヨットよりは速かったなんて気分を味わいたい。操船がうまくなったところで、何にも役に立ちませんが、でも、腕が良いという気分を味わいたい。人が動くのは、究極的には全てこの気分に行き着くのではないかと思います。

では、いつも、自分がどんな気分でいるのかを意識してみてはどうでしょうか?今、どんな気分か?そしてどんな気分をこれから味わいたいか?以前、人は誰でも、所詮は80年経てばこの世を去ると書きました。何を達成しようが、みんな同じです。すると、80年間の間に何をしたか、何を得たかよりも、どんな気分を味わってきたかが重要なのではないでしょうか?そうしますと、何をしたいかと同時にそれでどんな気分を味わいたいのかが、もう少し具体的になってくるのでは?

ヨットで何をしたいか?どんな乗り方をしたいか?それと、どんな気分を味わいたいか?良い気分を味わいたい。どんな良い気分なのか?良い気分とは必ずしも、爽やかさとかそういう類とは限りませんね。

野球をファンとして味わう気分と、自分が動いて、その結果得る気分は全く違う。味わいの深さが違うと思います。ヨットは誰かに動かしてもらって、乗るという気分もありますが、自分でやって味わう気分もある。昔は、ヨットレースにプロを雇ってという事がありましたが、最近では、オーナーが自ら舵を握るようになってきました。もちろん、その方が面白いに決まってます。プロを雇って優勝した気分と、勝てなくても、自分で動かした気分とは、全然違うと思うのですが。

そこで、いつもどんな気分で居るか、どんな気分を味わいたいかを意識して行動してはどうでしょうか?その気分の為に、ヨットを出し、舵を握る。ヨットが好きなのでは無く、本当はヨットで味わえる気分が好きなのであります。緊張感と緩和、プチ冒険、ゆったり感、知性的なところ、スリル、爽快さ、加速感、高い波にぶち当たった気分、安定感、......それらひとつひとつの気分をより味わいたい方向へとシフトしていきたい。その為に自分が動く。結局、これらが面白いと感じないと、ヨットはやれませんね。面白いは楽しいとは違うと思います。人生は楽しくはありません。でも、面白くする事はできるのでは、と思います。それも全部自分次第。ヨットを面白くすすのは自分次第。楽しさだけを求めず、面白さを求める。自分の面白い気分とは何か?ここに至ってはその結果はどうでも良くなります。プロセスをいかに面白くするかです。日本一周の旅に出るとします。そのプロセスを面白くする事を考えます。結果、達成すればそれで良いし、達成しなくても、それまで味わってきたプロセスが面白かったならば、それで良いのではないかと思います。結果よければ全て良し、という言葉がありますが、どうも納得いきません。どうしても結果を出さなければならない事ももちろんありますが、ヨットは遊びですから、そんな事にしばられる必要は無い。だからこそ遊びでいられる。これで結果を求められたら、もはや遊びでは無くなります。

風がビューっと吹いてきて、その時に舵を握る緊張感、時にはぞくぞくきます。これだけでもヨットの価値がある。風の無い時に、海面を見て、風を探す。そこに至って走り出した時の気分。ギリギリ上って、ちょっとでも油断すると裏風があたる時の舵を持つ気分、はたまた、彼女とデートセーリングした時のゆったりな気分、ヨットは良いも悪いもいろんな気分を味わう事ができます。それも全部自分次第ですから、気分を重視すると、セーリングは実に面白くなるのではないかと思う次第です。それで、ヨットの違いは何かとなりますと、そのヨットから得られる気分の違いという事になります。ヨットは気分で乗りましょう。

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