第五十話 進化

何でもそうですが、物事が進化しますと、その細分化され、専門性が深まっていきます。考えてみますと、昔は近所の病院で、何でも見てくれました。怪我した、腹が痛い、頭が痛い、子供でも大人でも、誰でも、何でもみてくれる、俗に言う町の病院です。

しかしながら、これが進化していきますと、内科、外科、眼科、いろいろと分野別に高度になっていきますが、反面、何でもというわけにはいきません。進化というのはそういうもんだろうと思います。
初期の頃は何でも、進化すると、分野別に深くなる。

これは医療に限らず、何でもそうなる。ヨットもそうだろうと思います。昔は何でもに近かった。でも、進化していきますと、レーサーはレーサーとしてもっともっととなります。進化すればする程、他の分野では使いにくい。しかし、得意分野においては、昔とは全く次元が異なるほど進化しています。

つまり、そのヨットのコンセプトがもっと明確になっていきます。そうなりますと、使う側も進化しなければなりません。何が望みであるのか?それは体の具合が悪い時、内科に行くべきか、外科なのか、はたまた別なのか、お腹痛いのに、眼科に行ってもしょういがないのと同じです。ただ、ヨットの場合は、これほど明確ではありませんが。

ヨットはどんどん進化を続けています。問題は使う側です。ヨットが進化をするなら、使う側も進化せざるを得ない。そうでないと、面白さが違ってきます。ただ、一般的というのがあります。レースには興味が無い、外洋まで行くつもりは無い。近場の沿岸クルージング、これが大勢を占めています。そういう意味では、量産艇がこの分野に最適かもしれません。ただ、使いながら、もっと時化た時に安心できるヨットとか、もっと走るヨット、レスポンスの良いヨットとか、そういう特定の事を望むようになりますと、選択は違ってきます。それらに対応するヨットは、その得意分野においては、全く異なるセーリングを提供してくれますが、反面、犠牲にしているものもある。外洋艇でもそうです。

つまり、中央に沿岸クルージング艇があるとしますと、左側の端にレーサーがあって、右端に外洋ヨットがある。左に少し寄るか、右側に寄るかによって、得るもの、犠牲にするものがる。しかし、ヨットにはそこにサイズの違いという要素もからまってきます。そこがまた面白いところです。同じサイズなら、これはこう、あっちより良いの悪いの言えますが、これがサイズ違いになりますとどうか?でっかいレーサーと小さな外洋艇だと、どっちが時化に楽でしょうか?

ヨット選びは難しい、ですが楽しい。ピタッとはまると、最高です。どんな乗り方をしたいのか、いろいろあってもその中でも一番は何か?じっくり考える価値はあると思いますね。考えるというより感じる事かもしれません。どんな時に最も面白さを感じるのか?セーリングしている時か、旅でどこかに行った時か、それともみんなで集まって過ごす時か?

しかし、好みというのはまたいい加減なもので、ある時、コロッと変わる事があります。柔軟な姿勢でいる事が肝要かと思います。そういう意味では、2、3艇の乗り換えでもしないと、解らないのかもしれません。そう言えば、最初の1艇で一生過ごしたと、聞いた事無いですね。

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