第四十五話 暴言
| そもそもヨットなんてのは、楽しいもんじゃない。それは冒険の連続に過ぎない。冒険は楽しいもんじゃない。しかし、冒険は人によっては、考え方によっては、とっても面白いものになる。つまり、ヨットはそういう冒険心を持ちあわせないと遊べない事になる。その他はマリーナライフか？別荘ライフ？ 世の中には危険度の高い仕事を職業にされる方がおられる。端から見ると、何とすごい。危険といつも隣り合わせ。でも、そういう職業は誰もができません。できるのは、そういう遺伝子を持った人だけ。 幸い、冒険にもいろいろある。人をあっと驚かせような冒険もあれば、自分の中だけの冒険もある。それはどっちでも構わない。自分で、ちょっと冒険して、それを面白がる事がでるたなら、それが最高。世界一周だけが冒険じゃない。新しい知識を得て、それを試すという冒険もある。 冒険には自分の中で、自分を超える必要がある。必要な事は用意周到な準備。それなしでは、無謀としか言えない。解って敢えてこうするのなら良い。人生も冒険の連続だ。冒険にも種類があり、自分なりの冒険をする必要がある。それが無いと退屈になる。退屈こそが敵でしょう。 冒険をしなくなった時、退屈になる。退屈には進歩が無い。マイナスの方が大きい。旅なら、もっと足を延ばすという冒険もあれば、行った事の無い所に行くのも冒険、エンジンを使わないで行くのも冒険、つまりはした事が無い事は全部冒険になる。セーリングなら、超微風でもエンジンを駆けない、強風でも出る、シングルに挑戦する、セールトリミングに挑戦する。これもいろいろある。 マリーナから出て、帰ってくるまでエンジンを一切使わないという冒険もある。 冒険するとしんどい事がある。でも、それが無いとやがては退屈になる。だからいつもプチ冒険を。冒険をすると進歩がある。進歩があると面白くなる。キャビンで読書するのも良い。しかし、毎日してると、飽きてくる。そこに冒険は無い。否、読書の中に冒険があるかも。ならば、ヨットのキャビンである必要性は無い。どこでもできる。 楽しいは享楽の中にあり、面白いはしんどさの中にあるのかもしれません。だから、冒険はしんどく、面白い。過ぎたる冒険が持つ困難は、面白いはずが無い。ただしんどいだけ。自分のレベルのほんの少し上の冒険が丁度良い。 いつも、ちょっとした冒険を。それが遊ぶコツかな？大きな恐怖では無く、ちょっとした緊張感とか。 大きなヨットに乗るのも冒険だし、小さなヨットに乗るのも冒険。した事の無い事には勇気が要る。でも、それが面白さの原因になる。ほんのちょっとの勇気。 人生８０年。何かを成し遂げようと、達成しようと、成功しようと、その年になれば死んでしまう。結果だけを重んじれば、人生は苦しい事の方が多い。ならば、プチ冒険ぐらいで、緊張と緩和を楽しみながら、その過程を面白くした方が良い。結果もよければバンバンザイですが。 金メダルを取るのは並大抵の努力では無い。でも、金メダル取っても、その後も人生は続く。並大抵の努力では無いと人は言うが、本人は苦しさのなかにも面白さを感じてやれればベストかな。苦しいだけで取った金メダルは、その後はどうするの？ 世界一周なんかしない方が良い。苦しくて、苦しくて、それで達成してしまうと、気が抜ける。外国人の中には７周も世界を回った人が居た。面白いからやってるだけ。何も成し遂げる事に重点は置いていない。 ただ真っ直ぐ走るだけに全神経を注いで、緊張を楽しむ。その走りが快走で、うまく行った時、その後の緩和には、何とも言えない気持ちよさがある。うまく行ったのは、自分の中で、これまでより自分がうまく行ったと感じれば充分。 どんな冒険を思いつき、どう実行するか？ここに面白さの是非がかかっているような。つまり、享楽的な遊びは、お金さえ出せば人が考えてくれるが、面白い遊びは自分で考えなければならない。 面白い遊びを考えて、ヨットはこんなのが良いとか考えて、そして実行に移す。その後もプチ冒険を携えて。これなら、始めから、終わりまで面白い。それで、何も達成しなくても、ヨットを引退する時は、結構満足できるかな？ まるで、日本の会席料理のような。最初にちょこっと出てきてうまい。また次にちょこっと出て、これもうまい。そして次々に出てきてみんなうまい。で、最後はみんなうまくて腹一杯。プチ冒険を味わって面白い、それをちょこちょこと続けながら、あ〜、面白いヨットライフだったと言えれば幸福。 各々の操船の技術はそのまた次の事。 人生８０年。残りを勘定すればすぐに計算が出来る。結果は大事だろうが、長いプロセスをどう味わうかの方がもっと大事かな。楽しいだけの人生は有り得ないが、面白い人生はある。楽しいだけのヨットライフは無いが、面白いヨットライフはある。 これからのヨットライフはグッドフィーリングを求める。どこかに行った達成感も良いでしょうが、フィーリングとしてのセーリングもある。目に見えて何も無いが、確実にある。良いヨットで走ると確かにフィーリングが違う。値段の違いはここにある。フィーリングにお金を出すのはどうか？こんな無駄は無いかもしれないが、こんなに面白さを与えてくれるものも無い。物にお金を出すのはまだ容易だが、フィーリングにお金を出すのは難しい。でも、それが出来れば、面白くなる。 |