第七十三話 見方の違い

あるオーストラリアからヨットで来た人ですが、マリーナにあるヨットを見て、日本人はみんなレーサーが好きなんだと言った。彼から見れば、みんなレーサーに見えるらしい。もちろん、彼のヨットはごっつい外洋艇です。

今日のクルージング艇を見れば、それが濃縮されており、まあ、我々から見れば、どこから見てもレーサーには見えない。しかし、一部、俗に言うレーサークルーザーというのがあります。今のクルージングを見てから、こういうレーサークルーザーを見ますと、レース興味に無いと思うかもしれませんが、昔、まだクルージング艇が今程濃縮されていなかった時代、今のレーサークルーザーはかつてのクルージング艇と見る事もできる。内装を見れば充分にアコモデーションは充実しています。パイプバースなんかじゃありません。前後のキャビンもちゃんとしています。ただ、今のクルージング艇ほどでは無いというだけかもしれない。セーリングエリアもそこそこあるし、これがショートハンドで、そこそこイージーハンドリングができて、スタビリティーもあるなら、昔で言えばクルージング艇として、今でも、それをクルージングに使うという方法もあるかもしれない。日常のセーリングはもちろん楽しめるし、クルージングも楽しめるヨット。レーサークルーザーというジャンルをはずして、セーリングをも重視したクルージング艇と言った方が良いかもしれません。

デイセーラーはシングルハンドを容易にする。こういうクルージング艇はシングルとはいかないかもしれませんが、ショートハンドで充分。レーサーという言葉に違和感を覚えるなら、スポーツクルージングとでも良いましょうか?

充実したキャビンと装備、純クルージング艇とは違いますが、そういうジャンルも見逃せません。そうなると、外洋艇があり、濃縮された純クルージング艇があり、スポーツクルージング艇があり、デイセーラーがある。そして、もうひとつはレーサーです。

見方によってそのヨットの印象は全く異なる。その見方は言葉によって表され、従ってそのヨットにどんな言葉を当てはめるかによって、印象が形造られる。知らない人が聞いた時、その言葉によって、見る前からある印象を持ってしまう。

デイセーラーはどんなイメージでしょうか?ある一定のイメージが出来上がって、それでも60フィートのデイセーラーなんて戸惑ってしまう。でも実際にデイセーラーコンセプトの60フィートがある。デイセーラーだってクルージングはできるし、泊まりもできる。レーサークルーザーは?何も知らない人が見た時、あの充実したキャビンを見ると、誰もレーサーとは思わないでしょう。スポーツクルージング艇と言い換えても、まだレーサー的ニュアンスは残る。何も考えずに見れば、そのものを見る事ができるかもしれませんが、言葉が先に来て、先入観を持つと見方も違う。でも、どんなヨットであるかを言葉で持って表す為に、どうしても言葉が必要になる。

レーサークルーザーという言葉が持つイメージ。先入観を捨てて、一度じっくり見る必要はありそうな気がします。クルージング派の方が、日常はセーリングを楽しみたいという場合には、純クルージング艇よりも面白いセーリングを味わえるでしょうし、アコモデーションが充実しているなら、クルージングとして使っても悪く無い。クルージングがエンジン主体なら、セールは関係無いわけですし。冷蔵庫もあれば、温水シャワーも浴びれる。ふかふかのクッションに、キャビンもそこそこ広い。
ギャレーだってジンバルのオーブン付きだし、これに電子レンジを加えても良いし、エアコンだって装備はできる。昔ならクルージング艇であります。それが一方でクルージング艇の濃縮がおこり、それをクルージング艇と呼ぶようになった。それだけかもしれません。そこで、レーサークルーザーと言われるヨットをもう一度見直してはいかがでしょうか?クルージング派の方への提案です。このレーサークルーザーという言葉は使いたくは無いのですが。ハイパフォーマンスクルージング艇?
これならまだましか?

それでクルージング派にお奨めできるのが、デイセーラー、ハイパフォーマンスクルージング艇、純クルージング艇、外洋艇、こういう事になりますかね。

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