第八十二話 仲間

デイセーラーだ、シングルハンドだと言ってますが、本当に気の合う仲間と、セーリングを堪能できるなら、それはそれで非常に面白いセーリングができる。ヨットがでかかろうが、セールがでかかろうが、スピンだって簡単に上げられる。そんなチームを持つ事ができるなら幸せです。

が、しかし、どうにもこうにも、なかなかそういう仲間にめぐり合えない。大勢集まれば集まるほど、セーリングそっちのけで、おしゃべりや飲み食いに興じ、どこかに寄って飯食ったり、そんなセーリングになってしまう。逆にセーリング大好き人間ばかりが集まるとレース一辺倒になり、場合によっては、ケブラーセールだ、もっと速いヨットがほしいだのになりかねない。それらが悪いわけでは無いのですが、お勧めしているのはレースでは無く、セーリングその物なので、なかなか難しい。

それじゃ、素人をひとり、若いのを何とか捕まえて、オーナー好みに仕上げていく。最初から、クルージングでのんびりなんかさせずに、セーリングを主とする。スポーツ感覚で。意外とその方がクルーも面白がったりするのではないかと思います。のんびりおしゃべりクルージングだけだと、意外にクルーは来なくなる。特に若い人はそうかなと思います。毎回そうなら、面白味に欠けて来る。そこにいつも若い女の子が居れば別ですがね。

そこのところが、セーリング仲間を持つ難しさです。チームを持ったら、仲間で楽しむ事ができる。それも実に面白いとは思います。しかし、いかんともし難い。今の若者でも、昔と同じように、スポーツに一生懸命励んでいる連中も大勢居ますし、何も家でTVゲームやったり、合コンばかりやる連中ばかりではありません。そういうスポーツ好きの若者だってたくさん居るはずです。ところが、だいたいきまって、そういう若者をヨットに呼んだ時、おしゃべりと飲み食いに終始してしまう。若者同士でわいわいやるならそれも面白いでしょう。しかし、そうでは無いわけで、それも毎回宴会船になると、面白さにかけてくる。それがいけないのではないか?半分以上はセーリングを堪能する、集中させる。面白さを味あわせてやる。そういう方がきっと長続きするのではないでしょうか?

去年の秋でしたか、オーナーがゲストを連れてやってきました。何と女性ばかり4人もです。そこで私はクルーとして一緒に乗ったのですが、丁度良い風が吹いていまして、結構走りました。最初は当然ながらおしゃべり三昧だったのが、ヨットが良い具合に走り出しますと、キャーキャーと悲鳴も最初のうちで、その後はかなり面白がっていました。これこそが、非日常なのではないかと思います。ジェットコースターが好きな子は多い。キャーキャー言いながら、楽しんでいます。のんびりメリーゴーランドじゃ、退屈なんです。そんな時は話に花が咲かないと面白く無いのです。風が無い時なら仕方無いですが。そんな時は、今日は風が無いからと言って、今度、もっと吹くときは本当のセーリングを楽しませてあげると言いましょう。

まあ、気の合う友人を何とかひとり、引きずり込みましょう。奥さんなら良いのですが、殆どの奥さんは好まない。紫外線が怖いとか。ヨットは我慢大会とか。それにヨットに来て、奥さんにとっても料理なんかしたくないですよ。家で毎日しているのに、遊びにきてまでやりたくありません。コーヒーさえも入れたく無いかも?

女性はキャビンで選ぶ。でも、選んだ当人は殆ど来ない。それが現実です。でも、その女性にセーリングを味合わせてあげましょう。その為にはオーナーがまずは楽しんで、自由になって、信頼されていなければなりません。ジェットコースターを遊べるのは、バンジージャンプを遊べるのは、怖いけれども安全であるという信頼があるからです。安全で無いかもしれないと思うと、誰も楽しむ事はできません。ですから、オーナーが充分楽しさを知って、練習しておく必要があります。すると、面白いセーリングを提供する事ができる。きっと、あ〜怖かったと言いながら、また乗りたくなると思います。何故なら、怖さの中にオーナーに対する信頼があるからです。

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