第七十八話 遊び物

日本人は遊びが苦手ですから、遊び物を開発するにおいては海外のものには勝てないような気がします。全く新しい遊びを開発するなんてのは、相当いろいろ遊んでおかないとできないかもしれません。また、遊びのマーケットも小さいので、尚更でしょう。ですから、遊び物は海外製品が良い、面白い、遊んでくれると思います。

日本の場合はそれらをさらに洗練するのは得意なのですが、同時に無難な場合も多い。冒険をしない。大抵の遊び物は特にアメリカから入ってくる事が多いようです。一旦、型が決まると、それを洗練させるのは日本人が得意です。但し、そこに充分なマーケットがある場合に限ります。

ヨットはと言いますと、マーケットとしては寂しい限りですので、そこで開発したり、洗練されたりという事が難しい。よって、我々は輸入に頼る事になります。ただ、海外で作られたものがそのまま日本にも合うかどうかは別です。品質の問題では無く、遊び方のスタイルの問題です。体の大きさ、手の器用さ、感覚的捉え方の違いもありますし、それこそ、遊びに対する考え方も違う。

例えば、遊びは善であるという考え方で、1ヶ月、2週間でも良いのですが、休暇をとって、遊ぶとしたら何をどうするでしょうか?キャビンヨットというのは、そういう感覚から生まれたヨットではないかと思います。どこに行くかは別にしても、2週間もヨットに滞在するとしたら、広いキャビンや温水や冷蔵庫やエアコンがほしくなるのは当然なのだろうと思います。

今更遊びが悪であるとは、さすがに日本でもそうは思わないでしょうが、それでも、長期になると、気にならない人は居ないでしょう。それで、どうしても日本の場合は短期になる事が多い。それで、短期の場合だと大きなキャビンヨットというのは不釣合い、使いあぐねる、もてあます、そういう感覚が出てこないでしょうか?土日休みが当たり前の時代になったとはいえ、2週間もこころおきなく遊べる人が何人居るでしょうか?仕事引退した後でも、生活の為では無く、仕事をしたいと思う人は少なく無い。それが日本人のアイデンティティーです。存在を遊びでは無く、仕事に求める。そんな人が多いし、それが悪いわけでは無く、そうだという事です。ただ、彼らも休みますし、遊びもしますが、どうしても長期というわけにもいかない。それが日本人気質ではないか?

テレビ、映画、ゴルフ、テニス、野球にサッカー、絵画、陶芸、音楽、登山にしても、短期でできる。
日本人には合っている。登山は本格的に山に登る長期のコースもありますが、もっと身近な登山が一般的です。海外旅行も正月やお盆をからめた休暇です。何でも無い時に、全く何も気にせず、2週間休める人は少ない。20数年前、ドイツに行った時ですが、ドイツでは最低3週間連続して休まなければならないという法律がありました。法律ですよ。そんな気質違いが昔からありますので、そう簡単には変えられません。

そんな西洋の文化にも、デイセーラーというのがある。昔なら、デイセーラーは小型が相場、それは価格の問題もあったかと思います。今のデイセーラーとは異質です。時代が進んで、彼らも、そういう文化の変化があるのかなという気がします。忙しい人が出てきた?それは兎も角、このデイセーリングというジャンルは日本人スタイルにピッタリじゃないか、と感じた次第です。

デイはもちろんの事、1泊か2泊なら充分、1週間にもなりますと、ずっと船内に泊まるのはしんどいかもしれませんが、ならば時々はホテルで寝ても良いぐらいの感覚でしょう。多分、今の使い方も同じようなものかもしれません。こういう時はクルージングであり、移動が主かもしれませんが、年間においてこういう時はそう多くは無いと思います。すると、後は、日常においてはデイセーリングという事になります。そしてこの時は、移動では無く、セーリングになる。年間の大半はセーリング、という事はこのセーリングに威力を発揮するヨットというのは、実は非常に使い勝手があると思う次第です。

移動の時はキャビンで過ごす事はあまり無い。あるとしても、寝ているぐらいでしょう。殆どはコクピットに居る。大事なのは、コクピットかもしれません。セーリングの時もコクピットに居ます。では、どんな時にキャビンに居るのか?寛ぐ時?食事の時?コクピットでやった方が気持ちが良いと思いますね。雨降りなら仕方無いですが。そうです、キャビンに居る時は仕方が無い時ではないでしょうか?できれば、寝る以外はコクピットに居る方が気持ち良いのでは?

つまり、キャビンは本当に長期に渡る以外は、あまり使わないのが現状ではないかと思う次第です。それなのに、キャビンを主にしてセーリングを犠牲にするのは、ちょっとどうかなと思うわけです。

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