第八十七話 工夫

あるオーナーが考えたアイデアをご紹介致します。このオーナーは70歳過ぎ、現役バリバリのヨットマンです。彼は買い換える度にヨットのサイズが小さくなり、今ではブルーウォーター21に乗られています。ブルーウォーター21というのは船外機ですが、コクピット後部に四角い穴があり、そこに船外機を設置するようになっています。ちょっとしたセールドライブのような感じと言えば、解っていただけるかなと思います。

そのオーナー、自分ひとりでマストにも登られます。自分で造った梯子です。面白いのは各ステップにメインセールのマストグルーブに入るスライダーを取り付けている事で、左右にぶれないのです。
  左の写真のトップをメインハリヤードで上げる
  梯子のステップには、プラスティックのスライ
  ダーがついてます。つまり、このスライダーを
  マストのグルーブに入れて、セールを上げる
  ようにメインハリヤードを引いて、マストトップ
  まで上げて固定します。

  もちろん、マストトップに行くまでの長さは必要
  にはなりますが、オーナーはこれで、27フィ
  ート、25、そして今は21フィートのヨットまで、
  全くひとりでマストに登られます。70歳オー
  バーの方ですよ。

  彼はとってもアイデアマンです。

  なかなか古い物が捨てられない世代です。
  ですから彼のヨットは一見するととっても複雑
  に見えます。船内にも荷物がたくさん。でも、
  これが不思議と、どんなにヒールしても、崩れ
  落ちてこない。

  こういう工夫を楽しんでおられます。元気な
  70代です。







  ついでにもうひとつ、彼のアイデアを紹介し
  ます。左の写真はステップです。板にゴムを
  はって、ハルに接触する部分を守るだけで
  無く滑らないようになっています。それを、
  デッキ上のアイとかクリートに固定していま
  す。これ以外にポンと乗っても、全く安定し
  ています。
  
  年取ると足が上がりにくくなるそうで、これは
  とっても重宝しているとか?

  ”あんた、これ作って、売らんね!”と笑いな
  がら言ってありました。

  セーリング中もこのままで走ります。

彼は何でも自分で作る人で、それを楽しんでおられます。引退してはや十数年、殆ど毎日マリーナに来ては、あっちこっちさわって、セーリングして、理屈はいろいろあるが、それさえ時には無視して、遊びだもん、と平気で言われます。

このヨット、ついに、ライフラインを撤去してしまいました。乗り降りが大変で、ライフラインに足がひっかかるそうで、この方が遥かに動き易いとか。いやいや、面白い方です。

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