第五十四話 デイセーリングの可能性

朝出て、夕方帰ってくるのはデイセーリングですが、一晩、二晩ぐらいのオーバーナイトまで含めても良いと思います。つまりは、ウィークエンドセーリングです。という事は殆どの方々の多くの割合をしめる使い方に該当するのではないかと思う次第です。人によっては何日も何ヶ月も出っ放しという方もおられますが、そういう方の使い方は全く違います。しかし、日常はデイセーリングをして、
年に1回か2回ぐらい、2〜3日のクルージングに出る程度でしたら、デイセーリングの範疇と考えていいかと思います。

デイセーリングの目的は何か?どこかの目的地を目指すわけでは無く、ただ、島をぐるっと回ってくるとか、どこまで行って帰ってくるとか、そういう事になると思いますが、その航程において、みんなでおしゃべりしながら、食事しながらでも結構ですが、行きか帰りか、航程のどこかでセーリングという行為に真剣に取り組んでみる事をお奨めします。デイセーリングの最もエキサイティングな場面を造り、全体のメリハリをつける。メリハリをつけるにはセーリングが最も良いと思います。全航程が2〜3時間なら、その間真剣にセーリングに取り組んで、帰ってきてからのんびり、みんなんでおしゃべりや食事を楽しむ。航程が長いならば、航程の中に取り込む。

そうやってメリハリをつけた使い方をしますと、結構面白いもので、おしゃべりの中にはセーリングについての話が出てくるでしょう。ああでも無い、こうでも無い。今度はこうしよう、ああしよう。セーリングは常に変化し、また技量も上がっていきますから、話題にもいつも変化が出てきます。デイセーリングとして遊ぶにはセーリングに取り組む事が最も良いと思います。

それが進むと、セーリングが面白くなり、キャビンの方がそれほど重要とは思わなくなってくる。それよりセーリング性能の方が気になってきます。その方が面白いからです。ベッド数が少ないとはいえ、年に何回使うか解らないベッド数より、セーリングの感覚の方が面白い。いざとなったら、寝泊りぐらいどうにでもなるもんです。海外のように、オーナーとゲストが別々にプライバシーを守る為に個室を必要とする。そういう習慣は日本には無い。大きなヨットならトイレが二つもある。これも欧米の習慣の表れだと思いますが、日本ではこういう時はみんな一緒でも気にならないと思います。銭湯にみんなで入るようなもの。日常はプライバシーがほしいし、1週間も2週間もとなる個室がほしい。でもデイセーリングでは全く不要ですし、ウィークエンド程度なら、個室無くても構わないと思いますが、一緒にクルージングしようという仲間でもありますし。

ロング以外なら、キャビン、個室、そういう物はあまり必要としないのではないでしょうか?もちろん、ホテルに泊まるという手もありますし。それなら、セーリングを遊ぶ事を優先して考えても良いのではないか、その分、面白いセーリングが堪能できる。面白ければ、意識はもっとセーリングに向かっていきます。最初は、いろんな事を考え、いろんな物が必要なのではないかと考えます。しかし、実際使うのはそう多くは無い。それに伴うメインテナンスが追いつかず、壊れたまま使っていないという機器もあるし、オーブン付きガスコンロを使わずに、簡易のポータブルのガスコンロを持ち込んでいる人は実に多い。そう割り切れると、意外に気軽になれるもんです。気軽になれたら、気軽にセーリングに出れる。そしてスイスイとセーリングを堪能してくる。セーリングに対して段々と深い知識もたまってくるし、実行していくといろんなセーリング感覚も自分の中に溜まってくる。蓄積されていく内容は、他では味わえない、それこそヨットやってる人だけの特権でもありますし、しかもどんなセーリングをしてきたかによって、その質も全く違ってくるわけです。

楽しい思い出もあるだろうし、寒かった、少し辛かった、スリルを感じた、快走で感激した、なるほどこうか?というような場面もあるでしょうし、突然の雨でずぶ濡れになる事もあるでしょう。楽しいという事の他にもいろんな事があります。できれば楽しい事だけと思いますが、でも、本当は楽しい事以外にもいろんな種類の感情を得た、その方が人生にグンと厚みを増してくる。思い出も厚みがあり、深いものになってきます。ですから、楽しさを求めつつも、やってきた楽しくない事も受け入れていく必要がある。10年ぐらい経って、過去を振り返った時、どんなセーリングをしてきたか、どんなヨットの使い方をしてきたか?逆に、今から10年後を想像して、振り返る時、こうでありたいと思う乗り方をスタートさせる。そういう考え方はどうでしょう?

デイセーリングの可能性は、各個人によって、いろんな可能性があると思います。どんなヨットでどんな風に使うか?10年後はどんな風になっているでしょうね?

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