第二十八話 掃除

メインテナンスと言いますと、機械的な整備と考えますが、もっと基本的な事で、掃除をするというのはかなり有効なメインテナンスかと思います。キャビンの中を見渡しますと、実にたくさんの荷物が積んであります。年に1回、いや2回ぐらい、不要な荷物は撤去して、クッションの下や、チャートテーブルの中、トイレ、冷蔵庫、ギャレーなどなど、掃除機と雑巾できれいに掃除してはいかがでしょう。これだけで、かなりスッキリします。見た目にも良くなる。

艇によっては、いろんなフックやアイなどがあっちこっちに取り付けられ、そのフックやアイが錆びたり、汚れたりしています。それらは実にみっともない。不要なフックなどは撤去、或いはきれいにするか、新しくするか、長年の使用でたまったゴミを撤去してきれいにしてみますと、それだけでもグレードは上がる。車はみんなきれいなのに、もっと高価なヨットはあまりきれいにはされていません。

デッキの上でもそうです。きれいに整頓されたヨットは少ないです。お金をかけて、いろんな装備を設置する。しかし、その後の使い方が結構使いっぱなしになる事が多い。それらが長年の経過で、
ヨットのグレードを下げてしまう。そんな印象があります。掃除をすれば、いろんな点に気がつきます。それで大事に至る前にちょっとの労力で事前にトラブルを防ぐ事もできます。おまけに、ヨットはいつもスッキリしていて、乗る時に気持ちが良いもんです。

欧米の中古艇の価格相場は日本よりも高い。でも、大抵、どれもきれいです。日本の中古艇価格の相場は年式に寄るところが大きく、きれいか、きれいでないかはあまり価格に影響しません。しかし、これからは違ってくると思います。何故なら、30年以上を経過したヨットが出てきました。30年経っても、ヨットはまだまだ乗れるじゃないか、と解ってきた。欧米では40年とか50年とかもありますが、日本はやっと30年物が出てきた。これらの古いヨットは従来なら二束三文でしたが、否、売れる事も考えなかったかもしれません。これからはメインテナンスがしっかりなされたヨットとそうで無いヨットの価格は明らかに違ってくる。当たり前の話で、同じ中古で、同じ年式でも、片方はきれい、片方は汚い。これを同じ価格で買う人は居ない。30年がヨットの寿命であったなら、同じかもしれませんが、もっと使えるなら、話は違ってくる。昔は20年経過したヨットは、もうどうかなという感じを一般的に持たれた。でも、こうやって30年経ったヨットでもきれいなヨットが出てくると、まてよ、という事になります。

しっかり造られたヨットは、船体はまったく問題が無い。基本は問題が無いんです。その他の備品が先に使えなくなる。錆びていたり、汚れっぱなしだったり、考えてみますと、その他の備品が本体の足を引っ張ってる状態かもしれません。

ですから、まず掃除をしましょう。内外をきれいに洗って、不用品は撤去して、整理整頓、普段した事ないでしょうが、雑巾がけもしましょう。キャビンに入った時、スッキリした印象を与えるようにしましょう。ついでに、錆び取りとか、動かない物、動く物、きちっと把握して、不要な物は撤去、必要な物なら整備するか交換、そういう事を定期的に行うならば、備品も寿命は延びる。よって結果メインテナンス費用も節約できます。それにスッキリ気分で乗れます。

中古艇を販売する時にも、当社専属で任された場合は、掃除をします。私物がまだ残っている場合は限界もありますが、掃除をする事で、購入される方の印象は違ってきます。いくら、備品が整備されていても、汚いヨットは印象が悪い。

簡単な掃除こそ、メインテナンスの基本かと思います。ところが、でかいヨット程、備品は多いし、私物も多くて大変ですね。でかいヨットにはクルーも居るでしょうから、クルーと一緒に、掃除もやらせましょう。乗るだけでは無く、みんなで、ヨットを把握して、整備して、いつも気持ち良く乗れるように。そうやってますと、次に何か起こった時、どこを点検すれば良いかも解ります。掃除は嫌な事では無く、知る事の大事な作業のひとつにもなります。きれいになれば、誰でも気持ち良いじゃないですか。ロッカーを開けると、いろんな物が雑に突っ込んであったり、いつまでも置いておいた備品が錆びてあたりを汚していたり、これじゃ良いセーリングはできません。

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