第二十五話 アレリオンスタイル

アレリオンはスポーツカーと同じです。その走りを楽しむヨットです。キャンピングカーとは違います。ですから旅をする向きではありません。でも、走ってただスピードを楽しむだけではありません。ヨットの場合は風が燃料ですから、その燃料は自然任せ、スピードだけでは無く、いろんな場面での、いろんなセーリングを味わう事になります。

スポーツカーは通常のセダンとスタイルが違うだけではありません。エンジンは高馬力、でもそれに伴う、ボディー剛性や足回り、ブレーキなどが強化されてはじめてスポーツカーとして認められる。アレリオンも同じで、低重心、船体剛性の強化がなされています。

スポーツカーは実用性というより、遊びが優先しています。ヨットはもともと遊びオンリーですが、キャンピングカーとしての遊びが優先されてきました。でも、考えてみれば、いろんな方々がおられますから、キャンピングカーだけでは無く、いろんなヨットが出てきても良いはずです。それでやっとスポーツカーが出てきた。欧米ではこのスポーツカーが流行ってきました。多くは元キャンピングカーからの乗り換えです。車のように2台持てれば良いのですが、ヨットではそうもいきません。それでも、多くの方々がキャンピングカーからスポーツカーへと乗り換えています。

ある広告を見ますと、パーティーができるとか、別荘とか、読書とか、いろんなキャビンの可能性がうたってあります。しかし、日本人のDNAには、そういう事を中心にして遊ぶ遺伝子は欧米人に比べると少ないような気がします。

アレリオンスタイルはそういう使い方を打ち破り、その欧米人にセーリングに行こうと誘いました。彼らはその誘いに乗り、これまでとは違うスタイルで、気楽にセーリングに興じる事になります。これまではキャビン優先だったのが、セーリング優先に変化しました。それがいま、広がってきています。スポーツカーですから、走って面白い。セーリングが面白い。そしてスポーツカーの美しさはセダンでは実現できない美しさがあります。それは実用性を重視していないからです。ある一点に絞る事によってそれが実現します。あるデザイナーによると、人間の大きさは一定で、美しさを保ったまま、人間が立てるだけのキャビンの天井の高さを確保するには、最低でも35,6フィートは必要だと言います。

実用性を重んじるという事から抜け出し、美しさを追求した。美しさは時には、実用性以上の喜びを与えてくれます。実用性は脳にアピールするかもしれませんが、美しさは心に感じさせる。遊びは感じるものです。脳では実用性を考え、心はまた別な物を要求する。でも、脳が勝つ事が多い。だからこそ、いまいち心から遊ぶ事ができない。遊びは心のゲームです。人生は頭脳のゲームかもしれません。心のゲームは心が決めるのが良いのですが、遊んだ事が無い人には心で決める事ができません。習慣的に頭脳で決める。ヨットはどう考えても実用的では無い。ですから、頭脳は必死に、それでも実用性を探し、幻想を創る。それを夢と名づける。でも、本当の夢は心の中にある。よくよく考えれば、夢は何かを達成する事では無く、それを手段にして心地良い心の状態を感じたいところにある。

セーリングをし続けると、頭脳で理屈をこねくり回して、セーリングをしますが、その結果はフィーリングとして現れる。結果は速いとかいう結果も出ますが、それでどう感じたかが重要です。速いとか遅いとか目に見える結果より、どう感じたかです。その感じを楽しむ、どんな感じも受け入れて楽しむ、遊びですからできる、それが最高のセーリングです。という事は、いかにセーリングを習得して心のゲームの割合を大きくするかです。それがアレリオンスタイル。

セーリングの操作が複雑すぎると頭脳ゲームの割合が大きい。それを克服するのは大変な時間と労力が必要になる。でも、それが簡単な操作でできるのであれば、その分、心のゲームができます。ゲームは楽しいだけでは無く、辛さも時にはある。でも全てを受け入れた時、最高の遊びになるのではないかと思います。快楽だけでは遊びの半分しか遊んでいない。

自由自在に操作して、何度も乗り続ける事ができたなら、心で遊ぶ事ができる。それがアレリオンスタイル。

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