第二十三話 だらだらと

日本人は一生懸命という事が好きです。何でも一生懸命している人をりっぱだと思います。しかし、たまには、だらだらとしてみるのも悪く無いかもしれません。

自然を見てもいつも一生懸命というわけでは無く、かんかん照りの時、どしゃぶりの時、強風の時
いろいろありますが、無風の時もあれば、どんより曇りの時もある。それが自然なのかもしれません。雨にも負けず、風にも負けずはりっぱな事かもしれませんが、時には、だらだらしてみる。

それは自然に合わせる。無風な時は、ただぼ〜っとして漂う。風が吹いてきたら少しだけ気を入れる。強風になったら、嫌が上でも、真剣になります。いつも、一生懸命ではエネルギーがもたない。
無風を知ると、風がある時は有り難い。強風になると、丁度良い風が有り難い。そんなメリハリも解ってきます。無風だとがっかりするかもしれませんが、こればかりはどうしようもありませんから、それなら、自然に合わせて、こっちもだらだらとしてみましょう。

良い時だけを選んでセーリングするというのは、良いようで、実はメリハリの無いセーリングかもしれません。ヨットに付き合うのは、自然に合わせて、だらだらしたり、張り切ったり、いろんなセーリングを体験する事になります。それも全てヨットのひとつですから、それはそれで良しとする。ぼ〜っとしている時こそ、何かを思いつくかもしれません。疲れが癒されるかもしれません。でも、家の中でエアコン効かせて寝ているのとは違います。

あるオーナーは2年で140回出航されました。年に70回です。そうしますと、その中には強風もあれば、微風、軽風、無風、雨、雪もあるでしょう。いろんな体験をされています。それがトータルで面白い。それが全部ヨットなんだろうと思います。そうしますと、快走した時は一層面白い感覚が増幅されていきます。面白いは面白く無い事も含めると、もっと面白くなる。

ですから、一生懸命やって、だらだらやって、その両方をそのまま味わう事も無駄ではないような気がします。無駄が必要で、その無駄も嫌わなければ無駄に終わらない。その時々の自然のままセーリングを味わってみるというのも良いかと思います。その為には、心に余裕が無ければならないかもしれません。何でも受け入れる余裕です。

確かに、無風は楽しくない。特に今の夏は最悪ですね。でも、秋になりますと、無風でも、エンジンを駆ける事無く、だらだらしてみてはいかがでしょうか。漂う感覚というのも悪く無いかもしれません。これを嫌う事がなければ、これほどのんびりした事はない。案外、癒されるかもしれません。

まあ、それでも、帰りがけに、ちょっと風が吹き始めると有り難いですね。そんなちょっとの風が実にありがたく思える。

人は何もしないでいる事が苦痛です。テレビ見るとか音楽聴くとか、本を読むとか何かをしたがる。でも、ヨットの上ですから、これはけっこうあきらめがつきます。ただ、ぼ〜っとしていられる。そんな事は地上に居たらできません。これもヨットの効用かもしれません。ぼ〜っとしている事が良いか、悪いか、是非、自分で試してみてください。何でも試してみるのが良いと思います。

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