第四話 ブルーハル

ヨーロッパでもアメリカでも、最近は紺色のハルカラーが人気らしい。これまではホワイトが相場でしたが、紺色を選ぶ人は多くなってきました。ホワイトのハルカラーというのは、例え船体が多少凸凹があっても目立たない。しかし、それが濃い色になると、凸凹があると非常に目立つ。という事は成型がきっちりしていないと、濃い色にはできないのです。ヨットによってはガラス繊維の目が浮き出ているのがありますが、みっともないです。

色を変えるにはゲルコートの色を変える。これが一般的ですが、ホワイトでは目立たなかったのが、紺や赤などにするとゲルコートはあまり紫外線には強くないので、数年で色が褪せてくる事があります。特に西日が当たる側だけが影響を受けたりします。ゲルコートは固いのですが、紫外線には弱い、それでホワイトなら目立たないという寸法です。

最近、アメリカで多くなって来たハルカラーの変更に、ゲルコートでは無く、オールグリップというのがあります。詳しくは知りませんが、ウレタン系の塗料だと思います。これは紫外線に強いので、長持ちです。でも、非常に高価、そりゃあそうでしょう。モールドから出して、塗装して磨き上げる。これを何回か繰り返す。手間がかかりますね。でも、手間かけないときれいにはならない。

そう言えば、先日、ある塗装場面を見てました。非常に早い、あっという間に完成。びっくりです。聞いてみますと、とっても安い。でも、近づいて見ますと、とてもとてもきれいとは言えない。本職は建築だそうで、オーナーから頼まれたとの事。ヨットのハルは建築塗装と同じにすると、きれいになりません。建築ではそこまで求められませんが、車とかヨットとか、そういうのはツルツルのピカピカじゃないといけません。

日本で塗装する場合は、たいていはウレタン塗装をすると思いますが、古いヨットでも、下地をきちんと出して、きちんと塗装すれば新艇のようにきれいになります。ピカピカのツルツルになります。もちろん、塗装毎に磨き上げなければなりません。

色というのは非常に難しいもので、紺とかダークグリーンとかが無難と言いますか、失敗が無い。もちろん、ピシッ引き締まった感じになるので、なかなか良い。昔は車は殆ど白というのが相場でしたが、最近は結構いろんな色があります。ヨットもこれからどんどんいろなカラーが出てくるでしょう。イタリアのヨットですが、船体は白でしたが、ドッグハウスがシルバーというのがありました。そのデザインも超モダンで、なかなかきれいでした。さすがはイタリア人、これからは、カラーもいろい
ろ楽しめるようにいろんな色が出てくると面白い。

もうひとつ、これもイタリアのヨットでしたが、ちょっとオレンジがかったレッドというのがありました。
フェラーリレッドだそうです。これもきれいなヨットでしたね。色は船体のデザインと影響しあうので、
デザインの持つ印象と合う色でなければ、おかしくなるかもしれません。センスの問題ですね。造船所も最近はいろんなカラーバリエーションを持つようになりました。ハルカラー、コーブストライプ、ウォーターライン、そして船底の色。おまけに、ブームカバーからファーリングジブのUVカバーの色まで、トータルコーディネートができるようになってきました。昔はカバーと言えば殆どブルーでしたが、最近は良いですね。それに船名も、昔はありきたり、でも最近はこれにも気を配る。私の知る限り最も凝っていたのは、ハルの細かいスプレーでグラデーションを入れながら船名をペイントしていたヨットです。船名だけでウン十万とか、さすがにここまで凝るとすごい。通常はカッティングシートをカットして船体に貼り付けますが、それでも今はいろんな形にカットできます。

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