第二十五話 ゲームの監督

先日の海はとても良いヨット日和でした。気温もちょうど良い、風も程よい、気持ちの良い1日でした。でも、その同じ海域で、その前はビュービューが風が吹いて、波は白波、同じ場所で、こうも違うそれが海です。

道路を走ると同じ道路。雨や風が吹く事はありますが、同じ舗装された道路。同じ店があり、同じ風景があり、もちろん少しづつ変化していますが、だいたい同じ。でも、海は違う。昨日と今日は全然違う事があります。風景は変わらないが、風と波は全然違います。これは舞台が違うのと同じ事

野球やサッカーは場所が違っても、海程違う事は無く、ベースの位置は同じで、グラウンドもだいたい同じ。でも、海は全く違っている。

人は変化を求め、いろんな事をします。野球はグラウンドが同じですし、自分のチームもだいたい同じですから、対戦相手を変え、勝敗という変化がほしくなる。もちろん、野球そのものがうまくなるという変化を求めたら、それを試したくなる。でも、海はフィールドが違う。

ヨットで対戦相手を求めるならレースになりますが、対戦相手を自然に求める事ができます。別に戦うわけじゃなくて、勝てる相手では無いが、自然により良くあわせるゲームです。自然の監督は常に作戦を変えてくるので、こちらもその準備をしなければならない。微風という作戦で来る事もあれば、強風のピッチャーを送り込んでくる事もある。そこに波という守備陣が来る。常に変化する。
その変化に意識をおけば、ヨットは退屈になる事は無い。

今日は微風だった。それなら微風なりの走りをするか、全く風が無い時は、相手がやる気の無い時、そんな事もある。相手が強気できたら、こちらもそれに合わせて、走る。うまくピタッといけば
ホームランの可能性もある。少なくともシングルヒットぐらは打ち返してやりたい。何度もヒットを打てば、点が入る。それはホームランと同じ点数。それは気分が良い、グッドフィーリングの点数。
まぐれあたりでも気分は同じ。まぐれでも何でも良いからヒットを打とう。その為には多少は学ぶ事も必要になる。学んだらヒットを打てる。そこに波が来て、ヒットが打てない事もある。でも、その次はヒットを打てる。ある程度の風で意図的にヒットを打ち続ける事ができたら、次はもっと強いピッチャーにでも対戦できる。自分の腕も知識も上がった証拠です。ハイレベルのグッドフィーリングとなります。

ヨットはゲーム。どんなゲームをするかは自分次第です。ゲームをしないのも自由です。面白さは待っていてもやってきませんが、求めれば必ず来る。どんなゲームをするか。それが全てです。
退屈なゲームをする事もできますし、エキサイティングなゲームもできる。宴会というゲームもあれば、外洋というゲームもある。全てゲームには違いない。ヨットの監督は自分です。戦わないのもゲーム、勝てる相手だけとするのもゲーム、ちょっとチャレンジするのもゲーム。指揮権は監督にあり。チームを集めて、走るのもあり。自分ひとりで挑むのもあり。戦うゲームなら2,3時間もあれば充分です。是非、ヒットを求めて海に出ましょう。このゲームの良いところは、負けないという事です。ヒットは打てなかったにしろ、負けは無い。そして次のチャンスがまたある。ヒット打てなくて、やめてしまえば、それが負けかもしれません。でも、やる気さえあれば、必ず、誰でもヒットは打てる。
そういうゲームです。ヒットの本数増やしとできればホームランをいつかかっ飛ばしたい。そういう
ゲームです。

野球ではホームランのサインを監督が出す事は無いと思いますが、ヨットではいつもホームランを期待しながら、ヒットを重ねる事に努めます。残念ながら、ホームランは自分の腕だけでは打てない。自然の方が、そういう場面を提供してくれないと打てない。それは自然からの恵みです。そういう場面に遭遇したら多いに感謝を。そういう場面に自分が合わせられなくて、ホームラン打てなかったら、また、次のチャンスを待ちましょう。

でも、ホームランとはいろんなホームランが合って、その日のセーリングが充実していた時、その帰りにふっと見上げた夕陽なんかに感動したりするもんです。それもホームラン、偶然がもたらすご褒美みたいなもんかなと思います。

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