第五十三話 ヨットを始める

これからヨットを始めようと思われる方、きっと大きなキャビンとかに魅了される事でしょう。でも、あえてシングルハンドヨットをお奨めしたいと思います。いきなりシングルなんか難しいと思われるかもしれませんが、シングルハンド用として開発され、建造されたヨットは、一人で操船する前提ですから、その分取り扱いがし易いのです。

重心は低く造られていますし、コントロールもコクピットから全部できる。操船も舵を持ったままできる。そういう風に造られているんです。大きなキャビンに魅了を感じるかもしれません。それも解らないわけじゃありませんが、操船がし易いのとどっちが良いでしょうか?大きすぎて、結局、ヨットをやめていかれる方も見てきました。大きなキャビンなのに、ヨットに泊まった事が無い人も大勢見てきました。最初の取り掛かりは非常に重要です。最初にどんな感じを持つか、それによって、その後のヨットライフが決まっていく事もあります。

最初に感じて頂きたい事は、寝泊りの快適さでは無く、やはりセーリングの面白さです。それを味わうにはキャビンヨットよりセーリングヨットだと思います。キャンピングカーよりスポーツカーです。
それを自由自在に扱えるようになってほしいと思います。それがどんなに面白い感覚をもたらすか、それはキャビンの比では無いと思います。そして、それがヨット本来の醍醐味でもあります。そういう感覚を持つと、それが忘れられなくなるでしょう。何故なら、他の世界では味わえない感覚だからです。本来、求めているのはこの感覚ではないでしょうか。

社交の場としてヨットを選ぶのであれば、話は違ってきます。でも、これからヨットに挑戦して、その面白さを味わいたいなら、セーリング重視が必要です。キャビンはそれを阻害する物でもあります。しかし、全く無いのも困る。ではその比率がどうか、という事になり、キャビン重視VSセーリング重視、どちらもヨットではありますが、似て非なるものです。

今、日本ではキャビン重視が大勢を占めていますが、それらが充分使われていない。恐らく、日本中で、稼働率が高いのはシングルハンドの方々ではないかと思います。それはセーリングの面白さを知っているからで、知ればまた味わいたくなるからだと思います。そして、セーリングを気軽に、いつでも出せる体勢を整えるとしたら、シングルハンドによる乗り方が最も良い事がわかります。
昔はシングルハンドヨットなんてのは無かった。でも、今は幸い、そういうヨットが出てきました。今の大きなキャビンヨットより遥かに乗り易いと思います。それで、セーリングを堪能して、どこででも味わえないセーリングの魅力を是非味わって頂きたいと思います。それさえ味わっておけば、この先何十年でも続けていく事ができる。長期間、ほったらかしなんて事も無いでしょう。

まず、最初にセーリングの醍醐味を味わっておくべきです。最高の部分を感じておくべきです。ヨットにしか無い魅力をつかんでおくべきです。そうすれば、その後は自由自在に、余裕をもって、どうにでも変化できます。何故なら、ヨットというものが良く解るからです。見る目もできるでしょう。機能も解る。ヨットの全てが解ります。キャビンがヨットでは無く、セーリングがヨットですから。キャビンがいくら大きくても、キャビンにいくら寝泊りしても、ヨットの事は解らない。ヨットは何年やってるかでは無く、何回セーリングしたかで決まります。ならば、気軽に、いつでも、何度でも出せる気になるヨットの方が良い。特に最初はそうです。そして、いろんな事が解ってきたベテランヨットマンも、最後はシングルハンドヨットがお奨めです。結局、どこに魅力が最もあるかが解ってくるからです。
セーリングが好きな方、嫌いでヨット始める人は居ないでしょうが、もっともっとセーリングの醍醐味を求めてください。ヨットにおいて、これ以上に面白い物は無いんです。セーリングするからヨットなんですから。帆があるからヨットでは無いんです。セーリングした時、初めてそれはヨットになります

次へ       目次へ