第二十五話 ワンデザイン

日本でワンデザインと言いますと、J24をすぐに思い浮かべる事ができます。このヨット程、広がったワンデザインとしてのレースはありません。様々な公式レースが行われていますが、最も面白いのはワンデザインレースだろうと思います。誰が見ても、順位があきらかな解り安いレースは、今後発展する上では必要な事ではないかと思います。ファーストホームが優勝、ゴール順です。

このワンデザインレースを行うには、レーサーでなくても良いわけです。全く同じヨットであれば、簡単なルールですぐにやる事ができます。例えば、ノルディックフォークやアレリオン、そのルールがきちんとあります。面白いのはアレリオンですが、ジェネカーやスピン使用禁止、メインとジブの2枚だけというルールです。

レースではあっても、本格レーサーではありませんので、あまりにもスピード重視をしますと、人間は競争になるとどんな事してでも勝ちたいと思うようになります。その為には、あらゆる事をやる。お金もかける。そうなると参加する事が大変になってきます。何もしないで、普通のままで、自分の腕だけで走る。それでも充分楽しめる。それが良いわけです。

普段はレースはしない。クルージング、スポーツセーリング、そういうセーリングを楽しみ、たまに、こういうワンデザインレースの機会があれば、面白いものになるでしょう。たくさんは無くても、同じヨットが2艇以上あれば、それでも結構楽しいレースができると思います。自分達主催でも良いわけです。どこどこ回って、ここまでとか、そう決めて、スタート、いい加減で良い。自分達主催の少数艇なら、いつでもできます。月1回とか、2月に1回とか、そして年間のトータル成績も楽しむ事ができます。

こういうワンデザインのレースは目標が持てるし、真剣にもなれるし、夢中にもなれる。自分達のルールで一生懸命走りますが、どこか余裕があって、遊びがある。全てをレースに注ぎ込もうなんて事は無いわけです。それで普段のセーリングも、ゆったりセーリングがあって、楽しみながらの練習セーリングがあって、真剣セーリングがある。

レースをしない方はクルージングですから、こういう場合、たいていはどこかに行きたくなります。でも、デイセーリングを楽しめるといい続けてきました。それには、意識の変化が必要です。デイセーリングをしかもシングルで遊ぶとなるとスポーツセーリングが良いと申しました。これに少し刺激を与える意味で、ワンデザインレースが遊びとしてできれば良いなと思います。日本のヨット界は低迷しています。ヨットを好きな方が少ないのでは無いと思います。どうやって遊んだら、面白いのかが今一解らないのではないか。レース以外ならどこか遠くへ行く事ぐらいか、キャビンライフぐらいしか想像できない。遠くに行くにはそれなりの条件が整う必要があるし、必ずしも思った時に行けるかどうか、天候の具合もりますし、時間と、クルーの都合もある。なかなか全部が合う事は無い。それに、いつも同じ場所でもあきるので、変化を求めて、もっと遠くへと思います。そうなればなる程、条件は揃わないものです。かといって、レースをやるにも簡単じゃない。レーサーには勝てないし、そういう本格レースにはお金もかかる。お祭りレースも悪くは無いが、参加しているだけの感も無いでは無い。

そこで、ワンデザインなら、自分の艇ともうひとつ同じ艇があれば、2艇でレースができる。簡単な自分達で作るルールで良い。島周り、ブイ周り、あまり細かい事を考えずに、遊びです。こういう事を定期的にやりますと、周辺に刺激となる。周りのヨットに対してもそうですし、普段の自分のセーリングに対しても刺激になるでしょう。日本の低迷するヨット界を救うのは、案外、こういうワンデザインのレースにあるんじゃないかと思います。どこどこ主催じゃなくて、自分達主催です。細かいルールは無しでも、ジェントルマンズルールと言いますか、姑息な事はしない。おおらかな気持ちが必要です。日本人ですから、武士道精神とでも言いましょうか。正々堂々と、フェアーな精神です。

それで私の目標は、ノルディックフォークやアレリオンの同じモデルを2艇づつ、同じ場所に納める事です。目標というより願いです。できれば、4,5艇集まれば最高でしょう。マリーナに来て、たまたま相手も来ていれば、じゃあ、今日やりますか?と一声で始まる。相手が居なければ、自分でスポーツする。最初はこの程度で始まる。こういう動きは、他のヨットにも波及し、彼らは彼らのヨットで同じワンデザインレースをすれば良い。そして、年1回でも、お祭りレースに出れば良い。欧米ではこのワンデザインは非常に盛んです。全くレーサーとは程遠いヨットでも、ワンデザインならレースになる。レーティングなど関係無いんです。

ワンデザインの気軽なレースは日本を救う。これもシングルなら、いつでもやれます。いろんなルールを決めておくのも良い。シングルが条件の時、ダブルハンドが条件、子供や女性を乗せる。いろんなパターンが考えられる。これから日本のヨット界を救うのは、デイセーリング、シングルハンド、ワンデザイン、そういう気軽な、でもエキサイティングにも演出できて、誰にでも解り易いレースではないかと思います。自分達で作り上げるレースではないかと思います。気持ちに余裕があって、遊び心で、でも、セーリングは真剣で、細かい事、言わない。でも、ちゃんと順位が決まり、解りやすく
誰でもヨット磨いて、腕磨いていけば、いつかチャンスはある。でも、勝つ事だけを目標に真剣になてはいけません。良いセーリングをする事が目標です。

ワンデザインレースが日本中のあっちこっちから、沸き起こってくると、日本のマリン業界も活気が出てくると思います。そう願ってます。欧米人はキャビンの使い方も上手ですし、こういうワンデザインレースもうまくやってます。本格レーサーから、重いクルージング艇でも楽しんでいます。日本人はキャビンの使い方が今一ですが、このワンデザインならいけるでしょう。ただ、今の所、それをする程多くは無いので、これから、同じマリーナに同型2艇を目標(願い)にしていきます。

逆に考えますと、日本ヨット界の低迷は、キャビンの使い方が上手ではない事と、デイセーリングにおける使い方が上手では無い事かもしれません。それで、デイセーリングをスポーツして、たまにワンデザインレースをやる。すると、案外キャビンの使い方も上手になるかもしれません。この場合、寝泊りするとか、そういう大袈裟でなくても、気軽に使うという事、リラックスするという事です。
やはり、今後のヨット界を救うのはデイセーリングにありです。このデイセーリングをいかに面白いものに演出するかです。そのひとつがワンデザインレースではなかろうかと、閃きました。

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