第105話 う〜、かっこ良い

ある初老の方、チーク製のトウレールとハンドレール、それにコクピットのトリミングは
ニス塗装を施しピカピカに磨かれています。コクピットのチークも美しい。エンジンをか
けて、コーヒーを飲みながら別のオーナーと軽く会話、実に手際良く準備を整えて、
さっきのオーナーに軽く手を上げて、これまた手際良く出ていった。う〜、かっこ良い。

実は外国でのシーンでした。セーリングをしている姿は見ていませんが、その気軽さ、
さりげなさ、ヨットを全くたいそうに考えていないような、そんな雰囲気、それでいてヨット
はぴかぴかに磨かれたクラシックな姿。おそらく人はどうであれ、自分のペースで楽し
んでいるのだろう、そう思いました。ヨットもオーナーも実にかっこ良かった。

何がかっこ良いかって、その気軽さでしょうね。ヨットを支配しているという感じ、このピカピカ
のヨットのボスは俺だ。そういう感じでしょうか。でも自分のヨットを実にいたわっている。
大事にしているが、存分に使いまくる。そしてまた手入れをしてやる。

多分、自分のヨットの良い部分も悪い部分も知って、可愛がって、充分乗ってやる。これで、
ヨットもオーナーも生き生きしてくる。こういうかっこ良いヨットマンになりましょう。外から
見てもかっこ良いヨットマンは、生き生きしている。このオーナーはメインテナンスもシングル
ハンドセーリングでも、誰かを乗せてあげても、ニスを塗る時も、実に楽しんでいるんじゃな
いでしょうかね。どこか壊れたら、文句言うどころか、修理してやるのも楽しんでいるのじゃ
ないか、そんな気がします。

アメリカのマリーナへ行くと、自分でニス塗ったりしている光景を良く見かけます。天気の良い
日に、時には子供連れで、弁当持って、ぺたぺた塗ってる。どんなに古いヨットでも、木が美し
いと見違えます。それに今日中に全部終わらせるぞ、何て気負いも無いような、実にのんびり
楽しんでる。ここにも気軽さがあります。今日は乗りまくるぞ、今日は全部終わらせるぞ、そんな
決意は置いといて、今している事を存分に楽しむ気軽さ。弁当だって、ゆったり食べますよ。時間
かけて。終わらなければ、また来ればいい。何で急がなきゃいけないの?商売でも無いのに。
今やってる事をゆったり楽しみましょう。気軽に。これがかっこいい。


次へ      目次へ