第九十話 レジャーの王様 

テレビは最大のレジャーでしょう。家に居ながら好きな番組が見れる。横になっても、どんな恰好してても良いし、気に入らなければリモコンでチャンネルはお望み通り、番組が気に入らなければ、ビデオだって借りられる時代。そのままテレビ見ながら寝てしまって良いのです。こんなお気楽なレジャーは無い。歌も聴けるし、行った事の無いアフリカの奥地にもビール飲みながら簡単にいけてしまう。飛び込んだニュースに勝手なコメントができる。

こんなお気楽レジャーが王様ですから、これに敵うものは他には無い。テレビをやめてヨットに行こうなんて言うのは馬鹿げた事、ヨットに行けば、暑い、寒い、雨も降れば、スプレーも浴びて、時には恐怖も味わう。そんな事しにいく方がおかしい。どこかに行ったら、帰らなくちゃならないし、行きっぱなしというわけにもいかない。仕事も忙しくて大変なのに、何でそんな事あえて自分からしにいく必要あるの?

しかもシングルハンドなんて、寂しくて、何で一人で乗るの?どうせ乗るなら誰かと一緒の方が楽しいし、心強いし、それが彼女ならもっと良いなあ。ヨットなんか乗らなくても、映画に行ってスリリングは味わえるし、ドライブに行って、シャレたレストランで食事してた方が余程楽しいし、旅がしたくなったら、温泉にでもつかって、のんびり風情も味わえる。こんな世界があるのに、ヨットなんてやる方がおかしい。

ヨット持ったら、持ったで、メインテナンスは必要だし、出そうと思ったら、風でひょいと流されて、冷や汗かいた。だいたい、斜めになって走るのが気に入らん。不安定極まりない。それに、出ようと思ったらいつも天気が悪いか、風が強すぎる。そんなのは御免だ。だいたい、陸上生活が基本の人間が、海や空に出て快適なわけがない。

全くその通り。ですから、ヨットはレジャーにはなり得ない。じゃあ、ヨットは何かというと、あえて言うなら冒険でしょうね。山が好きな人は山に登る。あえて冬山に上る。到着するまでのあのしんどさはたまりません。そして頂上の晴れ晴れした気持ちは瞬間で、すぐに下山。こんなもんレジャーでも何でも無い。冒険でしょう、名前をつけるとしたら。ヨットにしても、1年365日、一体何日最高のヨット日和が味わえるでしょう。多くは風が無いか、あり過ぎるかのどちらかの方が多い。風が無い時はだら〜っとして、風が強い時は緊張しっぱなしで、楽しい事はほんのたまにしか無い。こんな効率の悪いレジャーはしたくない。

その通りですね。ヨットはレジャーではありません。冒険なんです。ですから、ヨットをレジャーと見ると楽しくありません。でも必死になって楽しくしようと、いろんな装備を着けます。でも、それでもレジャーの王様のテレビには敵わんのです。それなら、家でテレビ見てた方が良いのです。それで
ヨットでテレビ見るという方法もありますね。エアコンもこの際ですから着けましょう。冷蔵庫も温水もシャワーも、ステレオも、電子レンジも、全部つけてしまいましょう。まだ、何か他にありますでしょうか?これなら家に居る時と同じように快適です。さあ、レジャーの王様、テレビを見ましょう。ビデオを見よう、出前なんか取る事だってできます。携帯電話もあります。パソコン持ち込んで、ちょっと仕事だってできるかもしれません。どんどん快適にしましょう。ヨットをレジャーにするなら、この方法しかありません。家に居るように快適です。

じゃあ、家に居たら良いという事になりますね。でも、それじゃあレジャーにはならない。やっぱりヨットである所に意義がある。波の音、涼しい風、環境が違う。そして、たまに良い時を狙って、出れば清清しい気分。ヨットをレジャーとして楽しむにはこうします。

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