第四十九話 ヨット運用の概念

ヨットを10年、或いはそれ以上の長い期間楽しんでいくには、それなりの考え方が必要ではないかと思います。1年や2年程度なら、誰でもほっといても遊べる。でも、それが5年、10年になるとなかなかそうはいかないものです。1年や2年なら、さらっと遊べるのですが、長い期間において続けていくには、何かが無いと続けられるものでは無い。

そこでセーリングに専心するという気持ちを持って頂きたいと思います。ただ漫然とセーリングするのでは無く、全神経をセーリングに集めるぐらいの気持ちを持ってセーリングしてみます。もちろん、1日中ずっと集中するのは無理ですから、その時の状況に応じて、メリハリが必要だと思います。集中する事によって、様々な動きを敏感に感じ取る事ができますから、操船がうまく行く時、行かない時の違いが解る。へたくそだろうが何だろうが、まずは感じ取る事がスタートです。そして、感じ取る事ができれば、もっとうまく走るにはどうしたら良いかがテーマに上ってくる。

全ては、このテーマに向かって、一歩一歩進んでいく。これが永遠のテーマです。そして一歩進む度に何かを感じ、それが夢中にさせてくれます。あらゆるテクニックの前に、うまく走りたいと思う事が大切なのではないかと思います。ヨットを永く遊ぶ秘訣は、うまくなりたいと思う事、それともうひとつは感じ取る力ではないかと思います。あれこれ操作しながら、同時に無心になって感じ取る。この繰り返しではないでしょうか。プロになるわけじゃなし、レースするわけじゃないし、という事で多くの人々がセーリングを重要視していない。それが飽きさせる秘訣です。つまり、セーリングを重視すれば飽きる事は無い。

それでは速いヨットでなければならないか、というとそうでも無い。風は弱い時も強い時もある。重いヨットであっても、風が強ければフルセールで良く走る。風に対するキャパシティーが強い側にシフトしてくる。軽いヨットで大きなセールなら、早めのリーフも必要になる。

とにかく、どんなヨットであるにしろ、自分の気に入ったヨットで、遊び物は気に入ったものでなければなりません。大きさも関係なく、自分の好きなヨットで、セーリングに専心する事。そして、その合間にリラックスをして、緊張と緩和のバランスを取る。緩和ばかりでも、緊張ばかりでも続かない。
気持ちが集中しない時はリラックスして、お茶でも飲んでるのが一番。

必ず集中とリラックスを取り混ぜる。集中する時はセーリングに専心し、リラックスの時は宴会でも
良い。こうやって、ヨット上達のカーブは徐々に上がり、体も頭の慣れてくる。慣れてきますと、考えるという時間が少なくて済みます。それでどうなるかと言いますと、神経は集中していながら、同時にとてもリラックスしている。そういう時間が長くなっていく。そして、リラックスしながら、ピンと張り詰めた感じが面白くなるんですね。わくわくしてきます。

キャビンも結構、ゲスト招待したクルージングも結構、宴会も結構、おしゃべりセーリングも結構です。でも、主体はどんな風に運用していったら良いか、最も面白いか、それを考えた方が良い。選んだものを主にしながら、状況に応じて、いろんな対応をしていく。引き出しはたくさん持った方が良いわけです。でも、根底には気軽さが必要である事は言うまでもありません。

今日は良い風吹いてるからセーリングに集中する。風が無い時は、キャビンでリラックスするか、のんびりセーリングか、どこかでアンカー打ってみるか、ヨットの脇でBBQでもするか、読書するか、風が強い時は、それを楽しみに出るか、メインテナンスするか、掃除するか、昼寝でもするか、考えればいろんな使い方があると思います。でも、ひとつ主にしてほしいのがセーリングする時は集中してやるという事です。あとはメリハリつけていけば、飽きる事は決して無いと思います。ずっと続けていけるようになると思います。集中するというだけで、それが全体に締める割合が少ないとしても、きっとセーリングが面白くなると思います。

次へ       目次へ