第二十九話 メインテナンスは最高の保険

ヨットにメインテナンスはつきものですが、考えようによっては最高の保険でもあります。日頃のメインテナンスをする事によって、避けられる多くの多額の出費がある。壊れるまでほっておくと交換を余儀なくされる場合も、その前に対応する事で長く使える。今の出費は将来の大きな出費を避ける事にもなりますので、そう考えればメインテナンスをするのは保険料を支払っているようなものです

メインテナンスをするにも時間が必要です。マリーナに乗りに来る暇がめったに無い方にとって、メインテナンスは考えられない。暇があったら乗る方を優先します。つまり、バランスを考える必要があります。忙しいなら、少しでも多くのセーリングを取る為には、メインテナンスの時間をあまり取らないで良いヨットにするという事も必要かもしれません。ヨットはそこに存在した瞬間に、劣化の方向に向かう。そこでほったらかしておくと、その進行は進む。そしてある時、久しぶりに来た時、エンジンがかからないとか、いろんなトラブルが発生するかもしれない。でも、それは当然な事です。何故なら保険料を払って無いのですから。

所有する事から始まり、それを維持していく。所有には夢を描くが、維持していくのに夢は描かない
本当はこの維持が大切です。いつでも、気持ちよく乗る為には、維持管理が必要です。最高に気に入ったヨットを手に入れ大喜びして、それで終わっては良くないですね。どうやって維持管理していくかは、そのヨットをこれからどんな風に運営していくかと同じくらい重要です。最近のテレビニュースでも騒いでいる政府の無駄遣い。建物建てるだけ建てて、その後の見通しが無いから、外資に安く叩きうる。そんな話とそれ程違わないような気がします。

マリーナを歩いてみると、でかいボートがある。でも、汚れまくって、船底は汚れ、そういう艇も少なく無い。本来なら、こんなでかい艇を所有する方は、自分でできなければフルタイムの管理人でも雇ってでも管理させるべきです。オーナーがいつきてもピッカピカに磨かれていなければならない。
つまり、所有する事は、その後の管理運営をどうするかを考慮していなければなりません。業者にやらせるなら、その費用も考慮しなければならないし、自分でするなら、できる範囲を考えなければなりません。ほったらかしておいて、いざという時にトラブルや大きな出費になるのは、ヨットが悪いのでは無く、ほったらかした自分に原因があり、ヨットはすねて見せて、それを教えてくれる。

基本的にはメインテナンスは自分でした方が良い。その為にはヨットの乗り方と同じように、メインテナンスの仕方をも勉強していかなければなりません。それも保険料のひとつです。いろんなヨットを見ますが、本当にメインテナンスの差は大きいです。ヨットの寿命はヨットの持つ品質もあるでしょうが、それを生かすも殺すもメインテナンス次第です。

それで何をするか、基本は掃除じゃないでしょうか。どこを開けてもきれいにクリーニングされている事。クリーニングすれば何か少しの変化があっても気がつくのが早い。早期発見、早期治療。
それとついてる物を動かして、使うという事でしょう。使えば磨耗する。でも、使わないと壊れる。

こう考えていくと、ヨットを運営するというのは、誰でもできない。相当なエネルギーが必要です。そのエネルギーは遊びというエネルギーに置き換えて考えると、楽しいエネルギーにする事もできます。楽しいエネルギーなら苦痛は無い。つまり、楽しいエネルギーにできるような範囲でなくてはならない。そうすると必然的にどんなヨットが良いかにも繋がります。ヨットを購入する時、どのサイズなら動かせるかだけでは無く、これらの運営の事も考慮する必要がある。

夢を実現するのも良い。でも、現実も見なければなりません。それが、長い期間に渡って夢を壊さない秘訣です。結局、これらのバランスが取れてこそ、トータルでヨットライフが楽しめる。ヨットにきて、船内はゴミだらけ、シート類は汚れて硬くなっている。それでは楽しくない。いつもきれいで、どこあけてもきれい。全て、きちんと動き、それを把握している。これなら安心だし、気持ちも良い。
是非、そういうヨットライフを作っていただきたいと思います。

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