第十六話 セーリングVS.クルージング

この二つは敵同士であるかのようにライバル視される事があります。クルージングだから
セーリングはどうでも良いかのように、セーリングだからクルージングには向かないかの
ように、でも、この二つは敵同士どころか、同じ枠組みの中にあります。クルージングでも
セーリングしますし、セーリングでもクルージングはできる。クルージングがセーリングせず
にエンジンで走る事がクルージングだとしても、エンジンはついてる。クルージングがキャビ
ンで寝泊りする事なら、キャビンもある。しかも、レーサーで無い限り、クルージング艇と遜
色無い程にあります。でも、クルージングしかしないからと言われます。クルージングでも
セーリングしますよね。クルージングという言葉の使い方がよろしくない。

クルージング艇とは、例えばモーターセーラーでエンジンがでかく、最初からエンジンで走る
割合が大きなヨットやロングキールで、長距離航海するヨットとか、とにかく時間をたっぷり
かけてぐるぐる回る、エンジンを使うし、風がよければたまに帆走する。そういうニュアンス
からすると、一般的に見かけるヨットは、ただのセーリングヨットであって、帆走性能の良い
ヨットとそうでないヨットでの違いになります。その帆走性能が劣るヨットをクルージング艇
と呼ぶのはちょっと違うような気がします。レーサーとは明らかに違いますが、その他は、
ただのセーリングヨットというジャンルで同じなのだと思います。

ですから、分け方をあえてするなら、レーサー、セーリングヨット、クルージングヨット、この
中のセーリングヨットは一般的なヨット全部を指し、クルージングヨットはロング向きとか、
沿岸を走る時に頻繁に使うモーターセーラーとか、そういう分け方の方が良いのではと思い
ます。実際、ちょっと遠出をする場合、80%、90%はエンジンで走ってます。車で言うなら
クルージングヨットはキャンピングカーでしょう。それでセーリングヨットはセダン。帆走性能
の良いヨットをスポーツカーとする事もできますが、このヨットにはキャビンも充分、エンジン
も充分のパワーがある。すると、これは最近のセダンの車が性能が良くなったと同じように
性能の良いセダンと同じです。昔の性能が劣る車をあえて求める事が無いように、ヨットに
おいて性能が劣るのをクルージング艇と呼んで、それを求めるのはちょっと違うような気が
します。そのクルージング艇と呼ぶヨットが、まさしくクルージングをするのに特別な性能を
持っているのなら別ですが、劣る事はあっても勝るものは無いのですから。

車で言うなら、セダンを買いたいから、性能はどうでも良いと言っているようなものです。でも、
今のセダンはみんな良く走ってくれます。まあ、性能は劣るが安いからというなら、それはちゃ
んとした理由になりますが、そうでは無い場合、価格差が無い場合、性能は良い方が良いと
思いますが、いかがでしょうか?帆走性能を高める為に、キャビンが無いなら話は別です。
極端にマストが細く、ランナーがついてるとかなら話は別です。特別な事をしなければ帆走でき
ないなら別です。そういうヨットはレーサーのジャンルです。でも、実際は同じなんです。

帆走性能の良いヨットと劣るヨット、それだけの違いです。どちらも、セーリングヨットです。
結局、物には名前が与えられます。与えられる事によって人ははじめて理解できます。名前
なしではどう理解して良いか解らない。そして、名前を与えた瞬間に、そのヨットがあるイメージ
を持つ事になります。でも、違う見方をすると、そのヨットは全く違うイメージになります。

クルージングヨットと名前をつければ、そのヨットはクルージングに向いているヨットというイメー
ジを持ちます。それが実際、何がそうなのかは不明でもです。でも、帆走性能が劣るヨットと
名前をつけたら、それはもはやクルージングヨットというイメージではなくなります。マイナス
イメージになってしまう。では、どうするか、名前のイメージを忘れて、デザイン、見かけ、艤装
の使いやすさ、帆走性能を見るのが良いのではないかと思います。

帆走性能の良い速いヨット、のんびりしたい時は、ジブファーラーをちょっと巻いて走れば良い。
簡単です。速いのは早くも、遅くも走れる。メイン1枚だけでも、ジブ1枚だけでも走れる。つまり
帆走性能が高いという事は低い部分にあわせられるが、低い物は高くはどうあがいてもできない

帆走性能の良いヨットをスポーツヨットと名前をつけると、スポーツはしないからと言われるかも
しれません。ならば、帆走性能の良いクルージングヨットと名前をつけましょう。これならまた、イメ
ージが変わりませんか?

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