第八十七話 ロングキール

今時ロングキールなんか要らないと思っていました。直進性が良いのはフィンキール
でも良いのは良い。でも、実際走ってみますと、その船型から来る波あたりの柔らかさ
はどうでしょう。抜群に柔らかい。叩かない。これはロングを走る時、何時間も何日も
波に叩かれるとしたら実に有難い事です。もちろん、フィンキールで頑丈なヨットは叩い
ても叩き方は違います。でも、この部分だけを取り上げているなら、あの船底の勾配の
きつさは、波に対して実に柔らかい。体が楽なんですね。

反面、取り回しはかなり要領が要ります。ですから、日常に気軽に乗るにはちょっととい
う感じがしますし、帆走性能という面でも他に譲る。ですから、名前の通り、ロング向き
なのです。ただ、しっかり作ったヨットで、バウのエントリー部分をフラットにせずに少し
でも角度をつけてある形状ではより叩きにくいし柔らかい。

この角度はモーターボートの世界ではデッドライズと言います。デッドライズが大きい程
ディープVと言って柔らかい。時化に強い。でも、反面、より大きなパワーが無いと同じ
艇速が出ない。つまり同じセールエリアなら艇速は遅いという事になります。つまり、
このバランスをどこで取るかという事になります。そこがデザイナーの考えどころでしょう。
コンセプトの違いになります。

艇速はほしいんですが、この柔らかいという事と低重心という、このふたつは実際走って
いますと、実に有難いです。本当に楽です。体が疲れにくい。時化るとその有難さが良く
身にしみます。

ロングキールが全部に寄与しているわけではもちろん無いのですが、ロングキールに伴う
船型がそうさせる。古いヨットで、フィンキールというヨットでも、船底が鋭角になているヨット
もあります。まあ、こういうヨットの方が日常では使い易いかなと思います。先日ご紹介した
SK25もそのひとつです。そして、今度来るノルディックフォーク25もそうです。実に柔らかい

古い船型というのは、クルージングという面においては非常に優れていると思いますね。ただ
優れているというのをどこにポイントを置くかですが、もうちょっと速い方が良いという事にな
ってきて船型は少しづつフラットになっていく。フラットになっていくにつれて、波に叩く度合いが
増えていきますから、それに対応した頑丈さとか、少し角度を残すとか、いろんな工夫がある。
まあ、いろいろ見ていきますと、実に面白いです。

よそが扱っているヨットをとやかく言いますと怒られてしまいますので、私共の取り扱い艇では
ノルディックフォーク25とオランダのマリーホルム33がロングキールです。実はこの二つは
北欧の同じ流れで作られたヨットなんです。狭いマリーナ内での要領を得るならば、実に頼もし
い時化にめっぽう強いヨットです。重量もあるし、バラストも重い。ただ、帆走性能としては、艇速
では負けちゃいます。でも、コクピットの位置が低いので、感覚的なスピード感は結構あるので
競争で無い限り、走って面白いので結構楽しめます。

 
マリーホルム33                 ノルディックフォーク25

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