第七十六話 夢中

使わない物は無駄だから要らないと言ったことがあります。でも、夢を壊すというご意見
もあります。その通りかもしれません。世の中から無駄を一切省いたら、こんなつまらない
世界は無いかもしれません。現実には使わなくても、それを使ったらどんなに楽しいことが
あるか、という想像は夢を描ける。その通りだと思います。ですから、無駄な物でも、設置
する事で夢を買うのは、それで良い。

それでもうひとつ別の夢の話をしたいと思います。現代は理屈と合理の世界で、これに反
する物は無駄とされます。常に批判や評価、意見、分析の中にいては、我々は生という
エネルギーは萎えてしまう。そこで登場するのが夢であり、夢はだいたい無駄な物が多い。
無駄というのは合理では無いという意味です。気分の問題です。成功して金持ちになるの
もその気分を味わいたいからです。人間にはそれが必要であり、それ無しでは生きられ
無い。そのエネルギーは単に、一時の快楽である事よりも、夢中になれるものがエネルギー
を生みだす。冷蔵庫から冷えたビールを取り出して、飲むという気分も最高ですが、それ以
上に何かに夢中になるというエネルギーの方が遥かに大きいと思います。成功して、結果
良い気分になるというより、成功のプロセスにおいて夢中になれたら、もっと良い気分では
ないかと思います。

それで、ヨットに夢中になるという事です。コクピットで冷えたビールを飲むよりも、スリリング
でエキサイティングなセーリングの探求は、エネルギーの補給には最高です。体はちょっと
疲れるかもしれませんが、心はエネルギーで満たされる。セーリングしたからと言って、何も
利益にはなりませんが、無駄なものですが、気持ちよくなる。合理の中で生きるにはそういう
無駄が大切なものではないかと感じます。

セーリングしてますと、集中していますと、何も考えなくなります。非常に感性が高まる。セー
リングの理屈は確かにあるものの、感性が普段よりも表に出てくる。それが気分を良くして
くれると思うのです。そこで、そういうセーリングして面白いヨット、そういう視点が出てくる。
そうすると、段々、これもあれも要らないな、と思えてくる。無駄だからじゃないんです。無い
方が良いと思えてくる。するともっとセーリングに集中できて、もっと良い気分を味わえる。

セーリングの探求と言いましても、複雑極まりないので、自分で勉強して、考えて、実行に移
す。そして体験して、また次のステップへと進む。そのプロセスがきっと夢中になれる。夢は
遠いところにありますが、夢中は夢の中に居ます。現実です。現実ですからパワーは大きい
体験して得るエネルギーです。

まあ、くだらない話は抜きにして、グルグルっと走り回ってみてください。お気に入りのヨットで
カッコよくセーリングしましょうよ。

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