第六話 MORE DAYSAILORS

アメリカで次々に発表されてきたデイセーラー、いずれもクラシックなデザインと
イージーハンドリングでセーリングを容易にしている。それらの成功を受けて、
さらに大きなサイズを発表している。

M36に続いて、M42、コンセプトはM36と同じ、デザインも同じで、その大きいバージョン、
である。加えて、フレンドシップ40という超高級艇のデイセーラーも同様で、この度、フレン
ドシップ53を発表、第一号艇の建造に入った。まだ、ハルができたぐらいで、写真は無い。
先日記載したブルックマンと言い、ヒンクリー42と言い、アレリオン38と言い、アメリカのデ
イセーラーはどんどんエスカレートしている。

いずれも共通するのは、クラシックなデザインであると言う事と、セールハンドリングが容易
という事です。小さなジブの大きなメインで、タッキングが楽だし、それでいて帆走性能も高い
おまけに、ブームファーラーとか、電動ウィンチとかによって、楽に操作できるような配慮が
ある。フレンドシップになると、シートの出し入れもボタンひとつでできる。

ここまで来るとデイセーラーかなという感もあるが、造りは非常に良いが、どれもそれ程、
大きなキャビンにはしていない。小さ目のキャビンにして重心を低く、やはり近場でのセーリン
グを重視している。もはや、荒波を乗り越えてのロングクルージングでは無く、近場でも良い
から、シングルやショートハンドで、気軽に、でもセーリングは堪能したい。そういう方々が増え
てきているのでしょう。それで、各造船所は最初のモデルを出し、成功を収めてきた。その結果
がもうちょっとでかいサイズという事になっていく。

まあ、40フィートもあればデイセーラーには充分かと、これでもでかいと思いますが、彼らの
サイズに対する相対的感覚は我々とは異なる。どこまで行くかは別として、確実にこういう需要
が深まっている事は確かです。

もちろん、これまであった艇で、デイセーリングとしても良いのだろうが、それ専用として考えら
れたヨットには、やはり違いが出てくる。こういう気軽なヨットがどんどん増える事を期待します。
だけど、これらはみんな高級艇、非常に高い。一般的には、まだまだこういうデイセーリングと
いうジャンルでは無い。大量生産艇がその証拠で、彼らのヨットはキャビン重視のようだ。一方
こちら側のヨットは、気軽にセーリングを堪能するというのがコンセプト。流れが違う。

クルージング艇というジャンルも、だんだん流れが分かれてきていると思う。ひとつはこういう
デイセーラーの台頭、それに従来からのクルージング艇、そしてスポーツセーリングです。
アメリカではデイセーラーがどんどん出てきて、ヨーロッパではスポーツが伸びてきている。
そして相変わらず日本では従来と変わらない。それは仕方の無い事だと思う。最も多い大量
生産艇がシフトしていないいかない限り、流れは変わらないだろう。アメリカでも、ヨーロッパで
も最も売れているのはそういうヨットです。でも、確実に別の流れはある。ただ、今の所、高級
過ぎて、日本では広がっていかない。

ヨットをどういう位置づけにするか、その事をもっと明確にしていく方が良いのではないかと思う。
やがては、日本でもこういうヨットが徐々には増えていくと思います。従来からのただクルージング
艇というより、スポーツとして楽しみたいとか、気軽にセーリングしたいとか、そういうためには
どんなヨットが良いのか、これまではキャビン重視だった。でも、キャビンは必要だが、今のヨット
のようにこんなにでかくする必要があるのか?それによって失った物は何か?それが新しい流れ
として、デイセーラーだったり、スポーツセーリングだったりするのではないかと思います。それでも
充分なキャビンはあるのです。何もでかくしなくても、充分なのです。それで、重心は低くなって、
セールハンドリングがしやすくなって、気軽に乗れる。ならば、こちらの方が面白いのではないか
と思うのですが。

とりあえず、30フィートぐらいまでで、シングルハンドができて、小さなジブに大きなメイン、低い重心
の美しいヨット、こういうのがどんどん流行ってくれると、日本も面白くなると思うんですが。それで
デイセーリングして、スポーツするんです。アメリカとヨーロッパの動きを両方同時に味わう。シング
ルハンドのお祭りレースがあっても良いし、船自慢コンテストがあっても良い。みんなが自由自在
に操り、セーリングを楽しむ。こういうのがあっても面白いのではと思います。

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