第六十八話 性能を見る

性能が良いとか、スタビリティーが高いとか、そんな事を言います。セールエリア
とか水線長とか、重量、そういうもので計算した数値も出る。でも、それがどれだけ
良いのか、解ります?その数値で判断できる人は、それと比較したヨットの性能を
体感できている人だけでしょう。一般では、数値上では速いんだろうなとは思うが、
実感は無い。まあ、それはともかく、レースでは無いけども、自分のヨットがどんな
ものか知るのは悪くは無い。いや、知っていたほうが何かと使いやすくなる。

どうやって知れば良いか、それは数値上では無く、体感として知る必要がる。
帆走スピードもスタビリティーも独立してあるのでは無く、お互いに影響をしあうので
総合的に見る必要があるだろう。それを知るに必要な物は、客観的に知るには、
やはりスピード計と風向風速計はあった方が良い。

全く同じヨットであっても、何人で乗るかによって状況は異なる。クルーは重しにも
なるので、クルーの体重で船を起こす事ができるからスタビリティーの助けになる。
でも一人の時はそれが無いので、スタビリティーは変わってくる。

スタビリティーが高く、セールエリアも大きいヨット、スタビリティーは低く、セールエリア
も少ないヨット、スタビリティーが低く、セールエリアが大きなヨット、そして高スタビリテ
ィーだが、セールエリアが小さいヨット。これに水線長と排水量、それに船型が拘わる。
難しい事は解らないので、実践で調べてみる。

通常乗る人数で、クルーが居るなら居る、一人なら一人、それで何度も走らせて見る
必要がある。一回では解らない。これも遊びながらやります。あくまで遊びですから。
ジェノアを一杯に引き込む。サイドステーにセールが当たるぐらい。ジブカーのリード
位置はジェノアのラフの長さの中央からクリューに向かって一直線に線を引いた延長
に設置。これで、ジブシートのテンションはジェノアのリーチとフットに均等にテンション
がかかる。メインセールはブームを中央にセット、これで、何ノットの風まで、オーバー
ヒールせずに走れるだろうか。風まかせだから何度も試してみなければ解らない。
クローズで走らせ、ヒール角度を約20度として、そこまでヒールするのに何ノットの風
でそうなるか。その時の艇速は?もちろん、ドラフトの深さもある。

ハリヤードが緩むとドラフトは後退するので、前進力に繋がらない。縦じわも横じわも入
らないようにハリヤードを引く。ドラフトのピークはセール中央からやや前。クローズで
走って、どのくらい風が吹くとヒール角度が20度を超えるか?いつも、これを試してみて
はいかがでしょうか。そしていつも同じようにセッティングする。同じようなヨットでも、早く
20度を超えてしまうものもあれば、超えないものもある。これがスタビリティーの違い。
スタビリティーが高いと、風を逃がすタイミングが遅くて良いわけで、その分走れる事に
なる。クルージング艇であっても、より走れる方が面白いに違いない。これを超えると
オーバーヒール、船体は風上に切りあがる力が大きくなるので、真っ直ぐ走らせるには
舵をきって風下に落とさなければ真っ直ぐ走れない。これはいけませんので、風を逃がす
事になります。ここを基準としてこの先を考えます。つまり、風が弱い時はセールをもっと
ゆったり張り、ドラフトを深くして、それから風が強くなってきたらドラフトを浅くしていく。基準
を超えてきたら、風を逃がす。この目安ができるので、非常に乗りやすくなるのではない
でしょうか。

ジェノアはシートを緩めれば風は逃げるので、今まで大きくヒールしていたものがスーッと
立ち上がってきます。でも、上り角度は落ちる。上り角度を重視するなら、反対側のジブシ
ートリーダーの位置を後方にひとつ、ふたつ、決めて下げ、タックする。すると、シートの引き
角度は後ろ側に下がるので、ジェノアのフットにテンションがかかって、リーチが緩む。シート
の引く量はやはり前と同じサイドステーにセールが当たるぐらい。同じ程度セールがひかれて
リードカーが下がったので、リーチが緩み、リーチが開く。そこから風が逃げる。上り角度は
セールの下側で稼ぐ。メインセールはトラベラーの左右で開くか、メインシートを緩めて開くか
これはどっちでも良いような気がします。シートを緩めて、カーを引き上げれば、リーチツイスト
が大きくなって、そこから逃げる。カーを下げると、これも風が逃げる。

まずは基準を設定する、知る事だと思います。そこから風がそれより弱いか、強いかで、操作
を意識的にする。スタビリティーの高いヨットはより大きなセールを展開できる。という事は同じ
セールエリアなら、風を逃がす必要も無く走れる場面が多くなる。その方が面白いのです。
クルージングでもです。キールを重くすると、排水量も重くなるので、走らなくなる。そこで
セールエリアを小さくするというヨットも結構ありますが、あんまり賛成できませんね。それより
スタビリティーを高くする為に、全体を低く作ってもらいたい。スタビリティーは何もキールだけ
の問題ではありません。船体の重心の高さ、幅にも関係します。でも、幅があまりに広いと
船底はよりフラットになるので、波にバシンと叩く。その衝撃はあまり心地良いものでも無い。

結局これらが、どのようにバランスされるか、そして、どのように走るか、速さだけでは無く、
乗り心地も重要なファクターです。何度も乗って、同じセッティングして、上る。それによって
どんな走りができるか、面白がってやってみてください。そうしたら、自分のヨットがどんなヨット
かが解ってきます。ちょっとしたブローで大きくヒールするもの、ちょっとしかしない物、誰より
も速くリーフしなければならない物、どの程度かが解ります。解ったら、それを基準にセッティ
ングを変えていけば良い事になります。どうぞ、遊んで見てください。無意識に適当にセットする
のでは無く、同じようにセッティングします。基準をまずつくりましょう。

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