第四十五話 More Personal

世の中非常に便利になった。1本の電車に乗り遅れても、心配する事は無い。2,3分以内に次が来る。
こんな事が当たり前で、秒刻みのスケジュールは、我々を秒刻みの過密スケジュールに追いたてる。
便利は良いが、あまった時間には別のスケジュールが組み入れられる。スケジュールは昔のままで、
今の便利さがあれば、どんなにか余裕のある生活をしているだろう。そんな事は土台無理なのだが、より
多くのスケジュールをこなす為に、便利になっている。のんびりする為では無いのだ。

こんな過密スケジュールで仕事をするのが当たり前の時代に、どうやってのんびりとロングクルージング
などに行く暇があるだろう。そんな事は夢のまた夢、家族も同じだ。それぞれのスケジュールがある。みん
な忙しいのだ。それでたまには、家族でのんびりというのも解らないでは無い。でも、みんな忙しい。
自分のスケジュールだって、いつ何時仕事が入ってくるかも解らない。のんびりなんかしていられないのだ

昔は、今に比べればスケジュールにはもっと余裕があった。暇を持て余している若者も居た。だからクルー
にはことかかなかった。みんなヨットにあこがれていたから、オーナーは王様扱いされた。でも、今はクルー
は貴重だから、王様はクルーなのだ。ヨット以外にもたくさんの面白い事がある。仕事もたくさんあるが、その
合間にたくさんのレジャーも過密スケジュールに何とかいれていく。のんびりなんかしていられない。レギュラ
ーのクルーを得ようとする事は難しい。電車のように秒刻みで動くのとは正反対のヨットを、秒刻みのスケジュ
ールの合間には入れられない。

こんな世の中に、どうやってヨットを楽しむか。どんなに忙しかろうが、好きなものは好きなのだから。どんなに
リアルだろうが、バーチャルのTVゲームでは物足りない。本当のゲームがしたいのだ。ヨットでのんびりする
というのも良いかもしれない。でも、本当にくつろぐには、時間が必要だ。それは単純に何時間とか、何日とい
う時間もあるが、心理的な時間も必要で、ゆったりした気持ちを同時に持たないといけません。それが簡単で
は無い。のんびりしに行くのに、朝早く起きてマリーナに行くなんてのも嫌だし、マリーナに行ったら、周りの
連中とおしゃべりし、コーヒーでも飲んでたらあっという間にお昼になる。それから準備して出かけると、そう
長い時間は出られない。

それでは、こういう状況をそのまま受け入れてはどうだろう。クルーが居ないなら、シングルハンドで、のんびり
昼から出航する。のんびりしに行くのでは無い。セーリングをスポーツしに行く。一汗かきに行く。昼食をキャビン
でとって、昼から3時間程度、夏なら夕方のサンセットを、のんびりする事が楽しいわけでは無い。すきな事に
集中してやるのが楽しい。それが気分をリフレッシュする。土日が休みなら、土曜日の3時間程度をセーリング
にあてる。毎週セーリングして、日曜日は家族サービス。ヨットはあくまでパーソナルな物として、純粋にセーリ
ングを堪能する。こういうやり方で乗るなら、大きなヨットでは無理がある。ちょっと小さめで、美しく、帆走性能の
高いヨットが良い。さしずめスポーツカーである。品質が良く、重心が低く、船体剛性の強いパーソナルヨットが
お奨めです。まあ、ポルシェに乗ってるような気分で、さーっとせーリングしてくるのである。こういうイメージを
アレリオンに見ている。ノルディックフォークに見ている。ビッグボートをしりめに、自由自在に乗りまわして、帆走
を純粋に楽しんでくるというのも、粋な大人の乗り方ではないかと思う。

テレビも車もパソコンも一人一台の時代になってきた。ヨットだって、家族の誰もが興味無いなら、自分だけの
パーソナルな楽しみとして、かっこいいお気に入りのヨットを粋に乗りこなしてはどうだろう。スイスイと乗りこなす
姿は、ビッグボートで酒飲んでるより遥かにかっこいいと思うのです。こういう乗り方は、セーリングにも精通して
くる。1,2シーズンやってくると、いろんな事に精通してきます。レベルの高いヨットマンになれる。これからの
時代に合った乗り方だと思います。こんな方には、ビッグボートより、スポーツヨットが似合う。それもFRPだらけの
無粋なヨットでは無く、クラシックで、美しく、ピカピカのチークで、第一、スポーツカーは若者が乗るより、年配の
方がかっこいいではないですか。こんなパーソナルスタイルはいかが?

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