第三十三話 ヨットの遊び方

みんな良いヨットがほしいと思うのは当たり前ですね。でも、良いヨットとは何かと言えば、
造りが良いものとか言いますが、造りさえ良ければ良いのかというとそうでもない。良い
悪いという評価は自分がどこに居るか、どんな視点で見るかによって異なります。つまり
自分がどんな視点を持っているかにかかっているので、それをまずは知る必要がると思い
ます。

それで多くの人達が、クルージングとして想像できる事、ファミリークルージング、仲間との
団欒、さわやかさセーリング、島に渡り、遠くにあこがれ、そういうヨットを望んできました。
舵の雑誌を見ますと、どれも美しい姿を見せ、どれもが良く見える。気に入ったデザインで
価格が手頃、そういうヨットが数多く売れてきた。しかしながら、そういうヨットがマリーナに
置き去りにされ、動かないヨットが増えている。買う時は心ときめかし、喜びも束の間、2,3
年たったら年に2,3回しか乗らない。そういう風なヨットも少なく無い。

これは何かが違うのではないか。大量生産艇はますますキャビン重視になり、一方、少量
生産は別の面を見せる。もちろん大量生産艇の方がたくさん売れるので、そういうヨットが
主流に見える。でも、主流が動かなくなったとは、これいかに。

大きなキャビンのヨットは欧米では重宝する。何故なら、ヨットに済みこむ連中が多いからだ。
済みこむまでは無いにしても、キャビンを良く使う。あるオーナーから聞いた話だが、オースト
ラリアのマリーナに平日に行った時、たくさんのヨットの中の70%ぐらいはオーナーが来ていた
そうだ。彼らは、ヨットを出しては居なかった、でも、キャビンが有効利用されていた。日本のマ
リーナでは日曜日でさえ、多くは無い。何故こうもちがうのだろうか。

前にも書いたが、日本人はキャビンでのんびり過ごす国民性では無いと思う。もちろん、たまに
はそうするだろう。でも、たまになのです。そのたまというのは年に2,3回?ヨットは使わない
からといって傷まないどころか、使わないから傷む。たまにきたらトラブルだらけ。

欧米人でもみんなヨットに住むわけでは無い。もっとセーリングしたい連中も居る。そういう本気
な人達の為には小規模の造船所が数多くある。何が違うのか、必要以上にキャビンを大きく
しない。フリーボードが高いのは重心を高くしてしまう。この事が実際セーリングするとどんなに
マイナスに働くか、それを知っている人達です。それだけでは無い。低い重心は通常のセーリン
グにおいて楽に走れるのです。それを知っているかいないか。もちろん、住むには関係無いし、
凪の時にしか出ないなら関係無いが。でも、同時に遠くへ行きたいと思う事は矛盾していないか。

大量生産艇は安いのだから、これが増えるのは当然だと思う。でも、キャビンの使い方が日本人
に合わないので、利用度が低い。これは一体どうしたら良いんだろう。大きなキャビンのヨットだけ
では無い。外洋艇を買って、一度も外洋に行かないどころか、日常でも殆ど動いていないヨットが
ある。外洋度が高ければ高い程、日常に動かすには面倒くさくなる。そのうちバッテリーは上がり
デッキのチークは汚れまくり、それでオーナーはフルカバーをかけた。でも、このフルカバーをはず
すだけでも大変になってしまった。

フリーボードの高い大きなキャビンは住むには良い。キャビン重視のヨットだ。だから、セーリングに
関しては二の次となる。オーナーのコンセプトがセーリングでは無く、キャビンにあるならそれでも良
いかもしれない。しかし、日本人には向かない。一方、本格的な外洋艇は、これまた外洋には良い
が日常のセーリングにはヘビー過ぎる。帆走を楽しむという時限とはちょっと違う。

それでセーリングを主体にしたヨットが最も日本人に会うのではないかと思う。だからと言って、キャ
ビンは充実している。ただ、フリーボードは低めにして、キャビンの天井がばかみたいに高くは無い。
バースもキャビンもギャレーもヘッドも充分に充実している。それ以上キャビンに何を求める必要が
あるだろう。造船所によっては、内装の造りは非常に良い。しっかり造っている。何故か?内装も
船体剛性を上げる役目をしているからである。そして、デッキに上がると、セーリングをいかにしやすく
するか。日本人にはセーリングを楽しんでもらいたい。

当社で扱っている一般的サイズを建造しているコマー社やセーバー社など、内装はかなり良い。しっか
り造って、船体剛性を高めている。どちらも同じ外洋艇であるが、セーバー社の方がもっと外洋志向が
強い。これは造りの問題では無く、考え方の問題です。コマー社は外洋艇だけれどもセーリング志向
が強い。同じ外洋でも、オーナーがどういう志向をされるかによるだろう。

つまり、ヨット遊びはキャビン遊び、セーリング遊び、外洋を含めたロングクルージング遊びの三つとなる
キャビン遊びは日本人に向かない事は解った。ロングクルージングはみんなのあこがれだが、仕事引退
できてからの話になる。それでお奨めはセーリング遊びとなる。それでさえ、上述したように、充分なる
キャビンがある。昔は大量生産艇でもフリーボードは低かった。この10年ぐらいだろうか、今のようになっ
てきたのは。

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