第三十話 頑丈?

クルージングだから頑丈なら良いという話は良く聞きます。頑丈っていったい何でしょう?
頑丈もどこまで頑丈なら満足なのでしょうか?じつにあいまいです。現実に船体が弱い
からといって帆走中に割れたとかいう事もあまりききません。では、それで良いかという
とそうも行かない。

船体が弱くても割れはしないかもしれないが、船体がねじれる事によっていろんなトラブル
も発生します。窓にクラックが入る。デッキとハルの接合面から水漏れする。バックステー
を引いても、船体が反ってします。まあ、いろいろです。ですが、頑丈にする為に船体のFR
P積層をやたらと厚くすると、これはもう重くて重くて走らない。あまりに遅いのは面白みにか
けてくる。

そこで、サンドイッチ構造の登場となる。積層間にバルサや化学的に作られたエアレックスや
デビニセル、その他、いろんな物、軽い物を間にはさんで、両サイドはグラスを積層する。これ
によって厚みをつける。でも重量は増やさない。こういう意図です。このサンドイッチの接着に
はバキュームバッグ方式で、真空引きして接着するのがよさそうです。剥離が心配ですから。

これだけではありません。内装にも注目です。まずバルクヘッド、これがハルと天井にきちんと
グラスで積層します。していないのも多いです。せっかくある家具類ですから、そういうのもき
ちんと船体の剛性に役立ちます。処理の仕方の問題です。

こうやって、造船所は、できるだけ頑丈に作りながら、重くなりすぎない努力を重ねています。
ところが、これが完成すると、目には見えないのです。ちょっと乗ったぐらいでも解りません。
でも、時化た時、それから年数が経った時、こういう差が出ます。だてにやってるわけでは無い
のです。つまり、帆走性能と重いと、頑丈と、どういう具合にバランスを取るかは造船所次第
です。それを見るのが業者であり、それを問うのがオーナーです。問わなければ答えません。

見えるところは誰でも見る。見えない部分をどうするか、ここに差ができる。この差に対してどう
評価するかです。それはオーナー次第です。

頑丈でさえあれば良い?そんな事はありません。走った方が面白いし、のぼり性能も良い方が
快適です。もちろん、限度はありますが。それに外洋だとしても、足が少しでも速い方が速く行け
る。1日の行動範囲は24時間はしれば相当な差が出るものです。外洋はエンジンは使いません
から。

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