第二十八話 面倒くさいヨット

最近は面倒くさい事を嫌がる人が多いようです。でも、基本的にヨットは面倒なものです。
ヨットはその面倒な作業を楽しめるか楽しめないかではないかと思います。面倒くさいと
思う人はヨットには乗らない方が良い。いちいち面倒かなと思われるような事をするのが、
ヨットなのです。でも、面倒くさがらずに、自分でやると、そのひとつひとつが自分に返っ
てくる。メインを自分で上げれば、その重みが体感できて、もっとスムースにするにはどう
したら良いか考えます。その体感が、自分のものになり、工夫が自分のものになる。そう
やってひとつひとつ覚えていきます。それらが総合して、ヨットが自分のものになる。

メインが重いからといってメインファーラーにすれば解決するかもしれません。でも、その前
に少し工夫してみてはどうかと思います。メインファーラーが全てプラスにはならない。マイ
ナスもあります。そのプラスとマイナスをちゃんと解って採用しないと、飛びついたものの
マイナスが大きかったなんていう事が少なくない。

もちろん、あえて面倒くさい方法を取れとは言いません。でも、ヨットは面倒くさいから面白い
のです。その作業をして、その反応を体感する遊びですから。面白い遊びはみんな面倒くさ
いのです。面倒なことを嫌がるところから退屈さが始まる。

野球を好きな方は多いでしょう。ピッチャーは次の球に何を投げるか考えます。どのコース
に投げるか、一球目は、二球目は、バッターの癖は、足が速いか遅いか、ランナーは、そう
いう面倒な事を考えてやってるから面白い。これが何も考えずにただ投げて、打つだけなら、
底の知れた、浅いものになって、エキサイティングでも何でもなくなる。そんな事は誰でも知っ
ています。知っていながら、自分でやるのは面倒くさがる。そして自分で面白く無いものに
してしまうのです。

ゲストを呼んで、コクピットに座ってもらう。後はずっとそこで楽しんでもらえば良い。思いやり
の厚い日本人はそう考える。でも、1回ならそれでも良いが、ゲストだって楽しみたいはず
です。何時間もそこに座ってるより、面倒くさい作業にちょっと参加した方が面白い。タックの
度に場所を移動する。何でも無い事です。じっとしてるより良い。シートを引かせたり、舵持た
せたり、あっちに移動したり、こっちに来たり、そういう方が面白いのです。ゲストが風に吹か
れてコクピットでじっとしていて楽しいと感じるのはわずかな時間です。同じ所に座らされたま
まじっとしている方がつらい。

ゲストに何にもさせないのは、自分がする作業は面倒だと思っているからかもしれません。
自分でやって面白いなら、ゲストにもやってもらって楽しんでもらう。そうではないから、後は
トークとビールでカバーするしか無い。でも、あなたのトークはヨットの上でなくとも聞けますが
ヨットはヨット出なければできない。どうせなら、ヨットでしかできない事で楽しんでもらいましょう
そして、自分もヨットでしか味わえない事を味わいましょう。その為には面倒くさい事を楽しむ事
これ以外には無い。

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