第五十七話 ヒールについて

ある方からヒールにつてのご質問がありました。サイドデッキが海面に接するぐらいで走って
いたそうです。ヒールのさせ過ぎは宜しくない。そういう事を聞いて試したところ、その方が良
かったそうです。

風上に向かって走っている。徐々に風が強くなっていくと、ヨットはより大きくヒールし、ヨット
自体は風上に向かおうとします。そうすると真っ直ぐには走れなくなるので、舵を風下にきって
真っ直ぐ走るようにする。このまま走りますと、風下側に切った舵にはかなりの水流の圧がか
かっており、これは舵には相当大きな負担になります。この事はブレーキをかけている事にも
なります。舵は真っ直ぐの方が抵抗が少ない。レースで無くても、より速く走るという事はより
船体にストレスがかからないスムースな走りですから、その方が良いわけですから、クルージ
ングだからと言っても、滑らかに、という事は速い方が良い事になります。あまり過度に舵に水
流の抵抗をかけつづけると舵が折れるなんて事もあるかもしれません。

風が強くなると、セールに大きな負荷がかかる事になりますから、ハリヤードが伸びる。伸びる
とドラフトは後側に移動します。それに、セールも伸びる。おまけにフォアステーも伸びてサギン
グします。するとドラフトは深くなる。この事が推進力よりヒールする力が大きくなってしまう。
ヒールして走ると、舵の抵抗ばかりか、人間も疲れてしまうし、効率は宜しくないので、適度に
風を逃がします。ただ、ある程度の風までは、シートを出して風を逃がすより、シートを引いて
その替わり、セール上部で風を逃がす方が良いようです。例えば、ジェノアであれば、トラック
の位置を後方に移します。すると、フット側のテンションはかかりますが、リーチ側のテンション
が緩む。シートを引いて、フット側で走り、セール上部側で風を逃がす。セールの下側はシート
が引かれてタイトになり、上部側はセールがねじれて、上部側から風が逃げる。もっと強くなる
とシートを緩める。メインセールはシートを緩めるとリーチが開くので風が逃げる。でも、ブーム
が外側に逃げますから、トラックを風上に移動させれば、ジェノアと同じように、セールをねじって
上部から風を逃がす事ができます。

ドラフトの位置を前側に移動させるのは、ハリヤードを締めることによってできます。でも、無理に
やるとハリヤードが切れる事もあるので注意が必要です。また、ドラフトの深さはバックステー
を引く事によって、フラットにできる。これらは以前にも書きましたが、マストが曲がり、セールの
カットと同じカーブを描くまで、セールはフラットになっていく。バングを引く事によって、下側の
ドラフトも浅くできる。まあ、クルージングですから、それ程厳密にする事は無いかもしれませんが
少なくとも、バックステーアジャスターぐらいはほしいなと思います。それに、ジェノアトラックのブ
ロック位置を前後に移動させる装置をつけても良いが、それより、小さなジブにして、メインセール
側を主にコントロールするのが良いと考えています。

基本的にどんなサイズのヨットであろうが、シングル又はダブルハンドでセーリングを楽しめるよう
うにしておくのが良いと思っています。少ない人数で快走できるようにしたい。レーサーのように
いろんな装置をつけて走るより、シンプルが良い。でも快走したい。その結果、小さなジブに大きな
メインと思っています。メインセールの方がシートの出し入れ、トラックの移動、バックステーとコン
トロールしやすいからです。

風が強くなっても、一定の傾斜角度を保ちながら、風を逃がしたりしながらコントロールする。舵の
抵抗はできるだけ少なくする。重心の低いヨットは同じ強さの風でもヒール角度は小さくなります。
その分、セールから風を逃がさず、より快走が楽しめる。重心の高いヨットは大きくヒールしますので
その分よけいに風を逃がさなければなりません。その分快走が減少してくる。やはり重心位置は低い
方が楽しいはずです。あくまでセーリングしての話ですが。

上り角度を良くする為にはシート引いてセールを内側に引き込みますが、同時にこの事はヒールを大
きくしますので、上部側から逃がす。本当はもっともっといろんな要素がからみあっています。どこまで
追求するかはオーナー次第ですが、クルージングと言えども少しづつ突っ込んでいくと面白いと思いま
すよ。

先日、ノルディックフォーク25に乗ってきました。微風であまり快走という程ではなかったのですが、
舵を持ちますと、どっしりした感覚で、海面が近いので、なかなか良い感じでした。まさしく、小さな
ジブに大きなメイン。これが日本で売れないのが不思議です。世界ではそごく売れているのに。

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