第三十八話 中古事情

船齢20年を超えていくようなヨット、そういうヨットが多くなってきましたが、どのヨット
を見ても、たいてい良い状態とは言いがたい。エンジンはかかる、セールも一応ある。
でも、見るからに古さを感じさせる。これでは売値が安くなるはず、これからどれだけ
費用がかかるのか?でも、次のオーナーもそれほどには手を入れないから、多少良く
なる程度か。ヨットの寿命はヨットそのものでは無く、こういうところにあるような気もす
る。

数年前、アメリカから中古ヨットが輸入された。船齢は20年をはるかにオーバーしてい
たが、その美しい事には驚きでした。木部はニスがたっぷり塗られ、チークデッキは、
多分張りかえられたのだろうと思いますが、非常にきれいでした。新艇の輝きとは違う
使い込んで、手入れして、そういう美しさがあった。こういうのを見ると、まだまだずっと
乗れるという気持ちになる。欧米のマリーナを歩くと、こんな美しいヨットが非常に多い
この手入れ次第で売値も変わる。だから、古いヨットが売りに出た時、たいていは、何年
にセールを作り変えた、いつ何をどうしたという記録が記載されている。だから、船体は
古いが機器類は新しい。

日本でも、大半のヨットは良くメインテナンスされて、美しさを保っているなら、中古艇
の相場はずっと高値になっているのではないかと思います。しかしながら、購入時には
お金をかけても、その後にはかけない傾向にあるのはとても残念です。ヨットは長く、
長く乗れるものです。日本でもそういう認識を持って、整備していくようになればと思いま
す。その整備は自分でやるのが基本ですが、どうしても無理なら業者に頼む。頼めば
お金がかかる。でも、この事は当然で、ヨットを購入する時から考えておく必要がある。
普段から自分でする癖をつけておくと、たいていの事は自分でできるものです。それに、
普段からやっておけば、一度に大きなお金がかかるという事も少ない。

動いてはいるが、錆びだらけで回りに錆びを撒き散らしている。エンジンも錆びだらけ、
でも動いてくれる。そうなる前に錆びを落として、きちんとしておくとトラブルは少ない。
どんなに良いヨットでも、機器類は20年も使えば、いつ壊れてもおかしく無いかもしれ
ない。でも、使えるうちは使いたいので、できるだけきれいにしておく。セールやシート類
は消耗品ですから、これらも変えておきたい。ただ、エンジンはきちんと整備していけば、
20年どころか長く持ちます。

普段から整備をして、10年ぐらいで一度全体を見なおしてみるという事が必要でしょう。
船底のバルブは動かないのが多いし、エンジンルームは汚れまくっている。ソファーの
下を見ればごみだらけ。私物が散乱し、それがまた錆びている。20年も経てば、たいて
いはこの程度です。だからもっと整備をして、売る時は高く売る。その方が得だし、次の
方も買った後の費用は少なくて済む。我々も安心して売れる。結局、どこかで費用はかか
るわけで、どこの時点でかけるかという事になる。整備していれば、それだけオーナーは
自分のヨットに精通する事になり安心でもある。良い事づくめなのです。

しかしながら、現実はそうでは無いので、ある時期、一度機にドカンと費用が発生する事に
なりかねない。こういう時にレストアという事になるが、レストアはかなり費用がかかります。
それで、これも諦めてそのままにしておく。でも、汚いヨットには乗る気もしない。

こういう状況から脱しなければなりません。まずは必要以上の私物を載せない事。私物が
多いとソファーの下とかは見なくなる。たまには、私物を整理して下さい。基本は掃除です。
掃除すればいろんな事に気づく。でも、こういう事はヨットがでかければでかい程大変ですね。
でも、それができる必要があります。故障するまでほっておくのでは無く、年に1回でも大掃除
をした方が良い。その時、必要であればシート類を交換したり、グリスを施したり、セールも
見直す。こうやっていくと、自分が自分のヨットに精通してくる。いろんな部分が見えてくる。
理解が深まり、トータルでヨットというものがどんな風にできているのかが解ってきます。する
と、面白くなってくるんですね。ヨットをトータルで楽しめるようになる。そうなってくると、自分が
使いやすいように、こうしたら良いとかああしたら良いとかのアイデアが出てきます。そうなって
初めて、ヨットは自分のものになるし、仮に買い換えを考えても、次のヨットはどんなのが良いか
も良く解る。まずはやる気になる事です。

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