第二十話 好きなヨットを買う

車を買う時、その実用性について考えます。それが2台目とか3台目とかなら別
ですが、1台目には家族を乗せる、荷物を載せる、そういう事を考えて買います。
それは車が実用的だからです。必要な物だからです。でも、2台目には好きな車
を買います。スポーツカーであったり、4駆であったり、様々です。その人の個性
が出ます。

ヨットには実用性はありません。必需品でも無い。買い物にも行けません。荷物
を運ぶ事も、用事で出かける事も無い。それなら、車のセカンドカーのように、自分
の個性一杯に選択して何が悪いでしょう。スポーツカーには家族が乗れない。
でも、ヨットなら、どんな小さなヨットでも家族ぐらい乗せれます。一般にある21フィ
ート程度以上なら、家族乗せるぐらいどおってこと無いです。例え、レーサーを買っ
ても家族ぐらい乗せれます。どこだって行けます。なのに、みんな申し合わせたか
のようにセダンを買うのでしょうか?それが好きなら構いません。

世間的に良いヨットと言われるヨットでなくても良い。自分の好きになったヨットを買う
のが一番です。どこが好きって、スタイル、デザイン、走り、何となく、実用性を重視
して、何人寝れるかなんて考えて買うのはナンセンスではないでしょうか。そんな
実用性は実用的では無いのです。何故なら、誰もそこに寝ないからです。或いは、
寝てもたまにです。それで、そういう実用性を軽視して買ったヨットでも、ちゃんと寝れ
るのです。

ヨットは走る時が最も美しいのです。最高の美しさを見せてくれます。どうやって、セー
リングをするかを考えて、好きなヨットを選べば良い。一人の時はこうやって、こう操船
しよう。二人居ればこうできる。3人なら。そして、自分がどんな立場なのかで、好きに
なったヨットを選べば良い。ただ、それだけです。

私は個人的にはデザインを重視します。美しいスタイルでなければいけません。そして
手がかかるにしても、ウッドを少しあしらったヨットに引かれます。そして、その中でも
帆走性能の良いヨット、操船のし易いヨット、重心の低いヨットに引かれます。見た目の
美しさは心をひきつけますし、操船のし易さはセーリングを容易にし、そのおかげで帆走
が楽しくなる。帆走が楽しいと、より滑らかな帆走をしたくなります。それを実行すると、
グッドフィーリングが得られます。さらに滑らかを目指し、腕を上げる。すると、それが、
さらに面白くなる。見た目の美しさをキープしながら、帆走の楽しさを求めて、腕を上げて
セーリングをする。そして、それを可能にする為に操船がし易いサイズ、装備、デッキア
レンジ、そして、これらが気軽さをもたらしてくれます。気軽に楽しめる事が重要だと思い
ます。どんなに素晴らしいヨットであっても、気軽に乗れなくては楽しむ事はできません。

気軽さはどこから来るかと言いますと、サイズやボリュームであったり、見た目から来る
事もある。装備がやたらと複雑で、操船が大変だとかいうのもいけません。重装備は気軽
さを阻害します。それに出るのにすぐに出れるようでなければならない。準備に時間が
かかるようでは、クルーでもいれば良いですが、一人の時は面倒になる。

こういう事を考えて、思いっきり好きなヨットを選ぶのが良い。多少キャビンが小さくても、
好きなら、どうにでも対応できます。我侭で良いと思います。何より、気軽にセーリングが
楽しめる、自分の好きなデザイン、そういう物を選んでください。実用性など無いのですから
何の役にも立たないのですから、ただ、そうやって選ぶと、最高の実用性以上の何かを
もたらしてくれる。自分さえその気なら。

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