第六十九話 フィーリングライフ


      

性能が高くなると、誰でもセーリングに目覚める。走れば面白いから、ヨットの動きが感じられるから、自分の操作で変化が解るから、それは自分の中の動物的感覚をくすぐる要素があります。世の中、ますます便利になって、でも、反面、いくら便利を享受しても、感覚的にワクワクする事が少なくなっているのではなかろうか?

この社会は、我々が人工的に造った世界です。それだけに、便利になる反面矛盾も多くなる。人工知能が進化し、車の完全自動化もそう遠くは無いでしょう。便利極まりない。しかし、便利になればなる程忙しくなります。だから、さらにもっと便利にしようとします。するともっと忙しくなる。忙しい事を自慢したりもします。しかし、この事はますます我々自身を追い詰めて行く事になるのではなかろうか。それが我々の人工的世界です。相当矛盾していると思います。

一時期、スローライフなんてのが流行ったりしましたが、この世界、もはやスローなんて事はできません。だから、我々に必要なのは、便利スピードに対抗するスローでは無く、人間としての感覚の在り方にあるのではないかと思います。心躍る様な感覚を味わうのは生きてる感覚、人が命ある生きものである事を感じさせてくれます。便利になればなる程、こういう感覚は重要な意味を持つのではないでしょうか?

片手に便利ライフを持ち、もう一方には感覚的世界、”フィーリングライフ” を持つ。人間としてのバランスを保ちます。たとえ短い時間であったとしても、感じる世界に浸る事は我々を人間としてリフレッシュしてくれるのではないかと思います。

忙しさに対抗し、癒してくれる代表格はテレビや映画、ゲームです。仮想の世界に入って、一時的な夢を見たり感動したり。最も簡単な手法です。この世界も進化して行きますが、でも、これらは仮想です。しかも、人工的な世界です。

セーリングは仮想では無く現実ですから、そのリアルなフィーリングで味わうワクワクした気持ち、繊細な感覚、そして、それが自然の中である事が重要です。自然は我々が造った人工的世界では無いだけに、我々も自然に従う事ができます。セーリングは自然の中のフィーリングライフです。


気軽に2,3時間のセーリングを感じて来る。人工社会だからこそ意味のあるフィーリングライフです。だからデイセーラーなのです。ヨットの性能も我々の知識も技術も、究極的にはフィーリングの為だと思います。

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