第四十七話 ライマンモース


      

S&Sデザインによるライマンモース48デイセーラー。クラシックなルックスですが、木造かと思いきや、カーボンのバキュームインフュージョン工法によって建造されている。最近のクラシックデザインは見た目だけで、その中身は最新です。これをデイセーラーと言うかどうかは、異論があるかもしれませんが、スリムな船体、低いフリーボード、キャビンは入念に造り込まれているが、長旅なんかは想定していない。これもデイセーラーの進化のひとつです。

ここで大事な事は、このヨットの豪華さとかでは無く、旅とセーリングに対する考え方に、変化が生まれて来たという事です。こういうヨットが生まれてくる時代になってきたという事です。つまり、一部のデイセーラーはより速いスピードを求めて進化を続け、一方では、デイセーリング+ショートクルージングのイメージの方向に進化している。旅に、何部屋も要らない、もっとカジュアルに楽しみたいという事です。普通のクルージング艇で、このサイズだったら、部屋は3つとか、4つとか作るでしょう。でも、もう、そんなのは要らないという考え方への変化です。



内装はご覧の通り、デイセーラー共通のワンルームだが、かなり造り込まれている。高級感の匂いがプンプンします。長旅でも無ければ、また、大勢を伴うものでも無ければ、キャビンはシンプルで良いし、気軽にもなれる。豪華さの度合いは別として、旅もこの程度の内装で充分だという考え方です。

要は、セーリング重視はデイセーラー共通だが、セーリングと旅とのバランスをどうするかで、セーリングプラスαの目指す方向が違って、それが多くのバリエーションを生み出しています。ただ、いずれにしろ、デイセーラーは日常的にセーリングを楽しむ事が大前提にあり、時に、ショートの旅を楽しむ。このヨットには、それに高級感を打ち出したデイセーラーと言えます。本当は、高級感は別としても、これで充分、少人数なら長旅だって可能ではあります。つまり、クルージングに対する考え方が、今までとは違ってきています。海外では、既にこういう考え方が現実化してきています。ここで強調したい事は、考え方の変化です。

エンジンはヤンマーの55HP,オーナー曰く、出航して5分でセーリングに入る。全ての操作は油圧によるボタン方式だそうで、このサイズにしては、クルージング艇の様な圧倒されるボリューム感が無いので、いつでもひとりで気軽にセーリングを楽しめるそうだ。外観はクルージング艇の様だが、中身が違う。このヨットはデイセーラーコンセプト、同時に近未来のクルージング艇でもあるかもしれません。日本でも見たいですね、こんなヨット。

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