第三十一話 手足の如く


      

セーリング好きの為のセーリングヨット、その為にデザインされ、その為に建造された唯一のヨットと言えるのが、デイセーラーです。何故なら、シングルで、自由自在に最も近く、さらに、セーリングがスピードだけでは無い事を感じさせてくれるからです。

デイセーラーの狙いは ”シングルハンドで手足の如く、自由自在に走らせる事とスピードのみならず、セーリングの感覚を重視している事” その為に様々な考慮が成されています。例えば、昨今のヨットとは異なり、コクピットは海面に近く、流れる水に手が届きそうです。この海面との距離の近さは、それだけでも乗り手の気分を、スポーツカーがそうである様に、随分違ったものに感じさせてくれます。

その上でのセーリングパフォーマンスですから、出発点から違うのです。スピード性能は多くのバリエーションがあり、全体的に高いパフォーマンスである事は言うまでも無い事ですが、中でも、特にハイスピードを誇るデイセーラーでは、レーサーに匹敵するものまであります。それでも、レースを主眼にしたわけではありません。そこがレーサーとは異なり、シングルハンドで、自由自在を目指しています。

また、セーリングのし易さは、例えば、同サイズのクルージング艇より、セールは少し小さ目、ところが、排水量はその半分近い。つまり、扱い易いにも拘わらず、性能は高い事を意味します。排水量の影響力は少々セールを大きくするより実に効果的です。また、操作フィーリングの違いは、そのヨットが精度高く造られている事を示し、さらに、船体剛性の高さは、セーリングに滑らかさを感じます。

速いヨットは面白い。ただ、スピード以外にもいろんなフィーリングを楽しんで、そのうえで、手足の如くヨットを走らせる。セーリング好きなら、最高のヨットだと思います。或いは、セーリング好きで無くても、デイセーラーに乗れば、セーリング好きになるかもしれませんね。

ヨットの遊び方には、いろいろありますが、ヨットの基本であるセーリングそのものに、高いレベルのセールフィーリングを求めたヨットは他には無い。セーリングが面白ければ、もうそれで充分じゃないかと思わせてくれます。そう言えば、デイセーラーが中古として市場に出る事は滅多にありません。日本だけでは無く、海外市場でも同じです。この事が何を意味するか?もう、他のジャンルのヨットに乗り換えようとは思わなくなる。

そう言えば、デイセーラーに乗りますと、ドジャーやビミニも要らないな〜という気になります。ライフラインも要らないな〜と思えます。シンプルに、セーリングを自由自在に味わえる楽しさ、面白さは、セーリングファンにとしてはたまりません。


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