第74話 自分自身とヨットの関係

自分自身のライフスタイルの中で、ヨットはどんな位置関係になるだろうか。たかがヨット
に乗るだけで、そんな事まで考えなくても良いかもしれないが、今の所、ヨットに乗るには
相当なるエネルギーを要しているようです。自分のエネルギーをかなり使うなら、その位置
関係はきちんとしておいた方が良い。生活のリズムの中で、仕事をする事、家族の事、遊
びの部分。その遊びの中でもヨットはどんな位置か、そして、それがどんな影響を他に与え
るのか。

ヨットをたいそうな物と考えると、乗るにはかなりのエネルギーが要求されます。それなりの
計画を立てて、準備をします。誰を誘うか、仕事の休みは取れるか、天候はどうか、行き先
のルート、何泊するのか、食事はどうするか、こういう計画は楽しくもあるのですが、エネル
ギーを要するもので頻繁には行けるものではありません。何故なら、どれかが都合良くうま
くいかなくなるからです。こういうプランは年に1,2回程度でしか行けません。何故なら、行
く前から相当なエネルギーを使ってしまうからです。この年に1,2回程度の大計画の為に
人はそれに見合うヨットを手に入れようとします。しかしながら、ヨットはこれだけでは済まな
い。この大計画の為に、他の時間を犠牲にしてしまう事も多いのです。全員がゆったり寝れ
るバースを揃えるとヨットはでかくなる。でかくなると、それに見合うメインテナンスが必要に
なるし、それを日常で動かすにも相当なエネルギーが必要です。日常に乗っていないヨット
はコンディションも悪く、いざという時にトラブルともなりかねません。

どんなヨットでも、日常に動かしていなければなりません。接していなければなりません。そ
うしないとコンディションは保てない。それで、日常にどんなヨットの乗り方をするかが大きな
ポイントです。ヨットを出さなくても、できるだけ多く接する事が大切です。多くの方々は大計
画を考え、日常の事は考えない傾向にある。これは逆であるべきです。日常を最も使い具合
の良い物にしておかなければなりません。バースの数が少ないなら、マットを床に敷いて寝て
も良いじゃないですか。キャンプしていると考えれば良い。それに大勢なら割りきってホテルに
泊まっても良い。日常において最も楽しめるヨットにして、あとはそれに合わせるのが良い。
バースがたくさんあっても、ヨットに泊まる人はほんのわずかなのが現状なのです。誰もヨット
に泊まらない。

ヨットが大きくなればなるほどエネルギーが必要です。それは動かす時だけのエネルギーでは
ありません。メインテナンスもそうです。時折、エンジンだけはかけに来ていると言われる方が
おられます。でも、それでは不充分なのです。ヨットにはいろんな物がついています。それらが
ちゃんと正常に作動する事が必要です。船底のバルブが固着して動かないヨットは多い。これ
などいざという時には困ります。エンジンも動けば良いというものでは無い。オイル漏れや,錆び
そういう事の積み重ねで大きなトラブルになっていきます。

人は予算さえあれば、自分のエネルギーをヨットに乗る事に殆どを使ってしまう。大きなヨットに
する傾向にあります。ヨットのオーナーになるという事は動かすだけでは無く、維持管理も大切
ですので、そこにもエネルギーをとっておかなければなりません。この両方があって、はじめて
ヨットはスムースに流れる。

ヨットを気軽な物として位置づけて下さい。それに見合うヨットにして下さい。気軽に出せて、気軽
にセーリングを楽しめて、そしていつでもグッドコンディションを保つ為に、残りのエネルギーを
メインテナンスに使ってください。多くの人達ができるだけ大きなヨットをほしがる。予算がある人
はそれを実行します。でも、維持管理についてはあまりかんがえていない。

先進国の欧米は違います。乗る事と同時に維持管理も考えています。彼らは自分で何でもやる。
やれない人は業者にしてもらう。これが当たり前です。それで、最近の傾向は維持管理の煩わし
さから開放される為に、シンプルな小型サイズに買い換える傾向にあります。それもシングルハン
ドです。ヨットだからと言って、もはやたいそうに外洋などに行こうなんて方々は少ない。暇も無い
し、それがわかった時、もっと気楽に乗れるヨット、メインテナンスにもさほど煩わしさを感じなくて
済むヨット、そういうヨットに変化してきています。

つまり、どんなヨットであるにしろ、ヨットがたいそうであっては楽しめない。どんなに大きくて、最新
の設備があっても、気楽さがなければ楽しめない。逆に、シンプルで、たいした物は無いけれども
いつでも気楽にセーリングを楽しめる。どちらが良いでしょうか。日本はヨットに関しては、まだまだ
これからです。ヨットそのものをもっと知って、気楽に遊べる位置において頂きたい。

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