第6話 ティーラーかラットか

最近のヨットはティラーが少なくなった。みんなラットが良いといわれる。確かに、ラットは車と
同じように操作すれば良いし、コクピットのスペースを取らないし、舵も軽くなる。ラットにする
にはラダーポストにコートランドという扇子のような形をした板を取り杖け、ワイヤーをはわして
そのワイヤーをピデスタル(ステアリング前のポスト)にもってくる。そこにステアリングホィール
を取り付ける構造なので、ある程度スペースが必要になってくる。
ティラーの場合は、ラダーポストにダイレクトにティラーを設置するので、まず故障が無い。波の
感触が直に手に伝わってくる。シングルハンドなどでは、両足の間にティラーをはさんで、ひざを
おりまげながらティラーが操船でき、かつこの時は両手があくので、シートを引いたり、出したり、
ができて都合が良い。それにさっと前に行きたいときも良い。

ラットは前にはさっと行けない。大きなステアリングが邪魔になる。それに慣れないと、ハーバー
でも細かい操作をしている時に舵がどっちを向いてか解らなくなるときがある。これは慌ててしまう。
ティラーは舵にダイレクトなので、舵が重くなる。まあ、バランスラダーなどでは軽いが。

どちらが良いかとは言えないが、シングルならティラーの方が良いのではと思う。もちろん、その他
の艤装とのコンビネーションもあるので、一概には言えない。ラットをにぎったまま、メインシートや
ジブシートなどに手が届くなら、それも良い。オートパイロットで走ればどうにでもなるが、少し長い
距離を走るので無い限り、近場のデイセーリング時はオートパイロットより、自分で操船したいもの。
そのうえで考えて、艤装に工夫をするか、そうでなければティラーの方がいいかと思う。

ステアリングだからといって、全てのヨットが舵操作が軽いのかというと、そういうわけでもない。ラダ
ーの構造にもよります。ラダーポストの位置やラダーの形状にもよります。これはティラーにも同じ
事が言える。全て重いというわけでは無い。大きなラットなら、細かい微妙な舵とりがし易い。ティラー
はそれこそ舵にダイレクトだから、ティラーの角度がそのまま舵の角度。非常に単純明快。
幅の広い大型艇にはステアリングが2つのツウィンラットというものもある。ちょっとかっこいいですね。

ステアリングはワイヤーで連結していますので、そのワイヤーが伸びたり、或いは最悪切れることも
無いでは無い。その為、緊急用ティラーというものがあり、これはダイレクトに舵に接続するので、ティ
ラーと同じ、でもあくまで緊急用です。

ついでながら、最近のステアリングのデザインも凝った物があり、ダブルスポークや木製や、結構
美しい、おしゃれなデザインある。一方、ティラーもストレートの何の変哲も無いものから、大きくカーブ
した木製ティラーでニス塗りのびかびかという美しいものもある。あるオーナーはティーラーヨットに
した。その人はバイオリニスト、そこで、ティラーの先をバイオリンと同じような形をデザインして、作った
とか、そういう凝り方もある。

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