第52話 ボスになる

ヨットを使いこなすには、ヨットを自分の支配化におかなければなりません。
どんなにきれいだろうが、どんなに豪華だろうが、腫れ物を触るような遠慮
がちに接するのでは支配下に置く事はできない。ヨットを隅から隅まで知り
そして、徹底的に使う。奴隷的に使うのではありません。どうどうと使う。でも
いたわり、愛情をかけるのは当然です。

ヨットを大切に扱う事は必要なことですが、その為に自分が支配化にされた
のでは誰がボスかは解らなくなる。ヨットに仕えてはなりません。ヨットを自分
に仕えさせなければ本当に乗りこなす事はできない。

大事にするが為にデッキにカバーをかける。これも良いでしょう。でも、乗る前
にはずし、乗った後は元に戻す。これが全く面倒で無ければ。自分が最も使い
やすい状態を作りだすのが必要です。自分が仕えてはいけません。ニスをたっ
ぷり塗ったキャビンにも靴で入る。自由に扱う。遠慮はしない。それで、オフシ
ーズンになったら、きれいにメインテナンスしてやる事です。それが嫌なら、豪華
な造りのキャビン艇など購入しない事です。

豪華なアルデンヨットなどでも靴で入る。それが大変だと感じるなら、もっとシンプ
ルなヨットにしましょう。本当はシンプルで充分楽しめるのです。

60年前にスウェーデンで設計されたノルディクフォーク25はフォルクスワーゲン
のヨット版だと言われました。シンプルな内装、でも力強い走りと外洋性、そういう
ヨットはいとも簡単に自分の支配化に置く事ができます。自分自身が主役になれ
る。セーリングする為にヨットにお伺いをたてる必要は無いのです。

シンプルですから、隅々まで簡単に知る事ができます。高価な飾り物でも扱うよう
に、丁寧に丁寧に取り扱うのは良いようで、実際はヨットに使われているように見
えます。だから、思う存分遊べないのです。汚さないように、傷つけないように、そ
んなに気を使うなんて、論外です。だからといって、乱暴で良いというのではありま
せん。やさしく扱うのですが、思う存分使い、そして手入れをきちんとしてやる。

あるヨットはデッキにフルカバーがなされている。気持ちはわかります。でも、オー
ナーはこのヨットを乗りこなす事はできない。面倒くさくて、カバーさえはずした事が
殆ど無い。という事は殆どセーリングしない。あるきれいな内装を持ったヨットで、
オーナーが何かを設置したいと考えた。でもそれを設置すると、室内にボルトが出
てくる。それで諦めた。不要な物ならどうでも良い。でも、その事で使いやすさが
減少するなら、ボスはヨットでオーナーは仕えです。きれいさを壊したく無いなら、
どうにかしてでも使いやすさを優先させて、工夫してでもやるべきです。

ヨットを大事にする気持ちは大切ですが、ヨットに仕えないように、自分がボスであ
り、自分の使いやすいヨットに調教していく。あくまでオーナー優先です。新艇時は
決してヨットは完成品ではありません。新艇に乗り、自分の使いやすいようにアレン
ジして、尚且つきれいに保つ。あくまで主役はオーナーであります。そうして初めて
ヨットを使いこなす事ができる。気持ちがヨットのパワーに負けてはいけません。ボス
になる事によって充実したヨットライフは自分の物になる。ヨットの大きさや美しさ、それ
らが持つパワーに自分が負けてしまうとヨットにはのれません。載せていただいている
だけです。ヨットのパワーを尊重し、且つ、自分のパワーに仕えさせる。

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