第五十八話 パフォーマンス


      

ある造船所は速いだけならそう難しくはない。今時はコンピューターを使ってデザインする。しかし、セーリングはそれだけじゃないから難しいと言われた。操作性、安定性、レスポンス、乗り心地等々、ヨットのパフォーマンスは多岐に渡る。セーリングを重視するなら、いろんな要素を考慮しなければならない。

ただ、そうは言ってもスピードは程度問題もあるが重要な要素である事には違いない。どの程度を目指すかは、そのヨットの根幹に関わる。車だったら、エンジンを高馬力にし、車体重量を軽くする。ヨットの場合も同じです。このエンジンに匹敵するのが、セール面積と言える。そして船体重量を軽くする。このバランスをどこで取るかによって、だいたいのパフォーマンスが決定される。

超速いヨットを造るなら、重量をできるだけ軽くし、セールをできるだけでかくする。或いは、そこまでは求めないのであれば、重量もセール面積もマイルドにする。そして、それぞれが目指したパフォーマンスに従って、様々な他の要素がそのパフォーマンスにバランスしていく。船型とかキール形状とか、舵の構造とか艤装とか。

デイセーラーはシングルハンドが前提にある。ならば、でかすぎるセールは扱いづらくなるかもしれない。 30フィートの某クルージング艇は、重量は約4.7t、セール面積は47u、昔のクルージング艇より重くなってきた。これに対して例えば、アレリオン30なら、重量は2.9t、セール面積は43.2u。どちらもセルフタッキングジブ。セール面積は約9.2%小さくなり、それに対して重量は38%も軽くなっている。ポイントはこの重量軽減にある。

因みに、バラストはクルージング艇が1.5t、アレリオンは1.2tです。バラスト比で言えば32%と41%になる。つまり、クルージング艇はキールを覗いた重量の船体を3.2tで建造し、アレリオンでは1.7tで建造している。約半分だ。だから良いという単純な話では無く、目指す処が違うので当然、ここでは相対的な違いを示しています。

船体の軽量化を基にパフォーマンスを向上させる。より扱いやすく、高い性能を求める。さらにセールフィーリングも重要ですから、船体剛性を高めてセーリングに滑らかさを求めていく。

さて、もうひとつ重要なのがセールの質です。これらの性能を引き出すセールの役割は少なくない。もちろん、ダクロンセールでも違いは解る。しかし、超ハイテクとは言わないまでも、ちょっと良いセールにすると、ヨットの性能がより引き出される。だから、セールはオプションにするんですね。

デイセーラーにはいろんなパフォーマンスのバリエーションがあります。それはスピードだけが全てでは無いという意味でもあります。

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