第五十七話 要る要らない


      

普段ひとりで乗る車に、三人も載せたら、途端に重さを感じます。それはドライブ感全体に影響してきます。アクセルペダルを踏んでも、反応が鈍い。と言っても、実用性には何ら影響はありません。しかし、重量ってこんなに影響するんだな〜と実感できます。

スポーツカーは重量をできる限り軽くしようと努力しますし、それでいてボディー剛性を高める努力もする。この相反する要素をできる限り実現しようとするのがスポーツカーの技術です。重心は低く、足回りやブレーキも強化されます。それで実現するドライブ感はやはり違う。面白いけど、でも、実用性は低い。

年を取ってきたら、スポーツカーが似合ってくる。若者ではまだまだスポーツカーには勝てない。何故なら、スポーツカーは高い技術を集め、遊び心を実現する車であり、それなりの人間としての熟度と遊び心が必要だろう。そうじゃないと釣り合わない。スポーツカーは若者用の車では無いのです。ぶっ飛ばすだけじゃない。味わいです。そろそろスポーツカーが似合う年齢になってきたかな〜?

スポーツカーは相対的にスピードは速い。しかし、全てのスポーツカーがトップスピード争いをしているわけじゃない。カーブを曲がる時、加速する時、ハンドルを切る時、レスポンス、安定性、車体の動き方、様々な動作における性能を味わう。人間の感性にうったえかける。例え同じスピードで走っても、やっぱり違う。

車に対して実用性よりも感性を求める割合が多くなった時、スポーツカーがそれに応えてくれる。これはデイセーラーにおおいに通じる処があります。本音で言うと、実用性なんかどうでも良いのです。それはちょっと言い過ぎかもしれないが、割合としては低い。そして、ヨットにとっては実用性よりも面白さが重要なんだろうと思います。それって感性ですから。

実用性を重んじるといろんな物が必要に思えてきます。これは言わば思考の癖みたいなもので、良く考えてみると、無くても良い物ばかり。別にあって使わなくても良いんですが、それが気持ちを重くするなら問題です。必要な物より必要で無い物が見えてくると、逆に面白さが増えるかもしれない。

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