第二十六話 最大の魅力 ー臨場感ー


      


デイセーラーが他のヨットと違う最大の魅力はシングルハンド仕様である事じゃないかと思います。ヨットは本来はチームとして走らせるものかもしれません。息の合ったチームでの帆走は、とっても気分を高揚させてくれます。風に調和し、仲間とも調和します。それもセーリングの魅力ではありますが、それをひとりで全部こなす事ができるというのも魅力です。

シングルの魅力は自分で考え、自分で操作し、自分で感じ取ります。自分の考えと操作と自分のフィーリングと、これらを調和させる。これは何とも言えない気分になれます。何故なら、全部が自分の中にあり、より臨場感が増幅するからではないかと思います。チームとはまた違った魅力です。間違った操作も正しい操作も、全部自分に臨場感たっぷりで戻ってくる。

セーリング最大の魅力は臨場感ではないかと思います。顔に当たる風、スピード感、加速感、海という広いフィールド、船体がヒールしたり、そこで安定したり、微妙な動きをしたり、さらに、操作をする者には、別の臨場感が加わる。舵を持つ者には波から来る変化、それぞれのシートを操作する者にはその力加減とその変化、それらにはみんな頭脳から発信された意図があり、シングルでは全部自分が受け取る事になります。必ずしも全部うまく行くわけじゃない。その臨場感も受け取り、全てが調和する時の臨場感も全部受け取ります。考えてみたら我儘にやれる最高の贅沢かもしれません。

ところで、多くの方が福岡で開催されたアメリカズカップを観戦された事と思います。アジアで初めてとか、日本で初めてとか、世界最高のヨットレースとか、いろんな表現がなされます。でも、最も味わったのは6チームがしのぎを削るあの臨場感にあったのではないでしょうか?テレビで観るより、現場の方が臨場感があります。自分でセーリングしたらもっと臨場感があります。そしてさらにシングルだったら・・・



次へ       目次へ