第二十八話 サイズアップ効果



      
スピード性能と安定性、これらを上げていく事ができるのがサイズアップの効果になります。サイズアップすれば必然的に排水量は重くなり、セール面積も大きくなります。それで船体重量、バラスト重量、セール面積の増大のバランスが、サイズアップすればするほど、デザイナーはそれらの配分の自由裁量の余地が大きくなってきます。

従って、スピード重視か、安定性重視か、或いはその両方の間を取るか? デザイナーの意図が伺える事になります。ですから、同等サイズの他のモデルと、排水量、バラスト重量、セール面積を比較して行けば、デザイナーの意図するパフォーマンスを推察する事ができます。速さか、安定性か、或いは、サイズアップしても、セールをあまり大きくしないで、取扱いを楽にするという考え方も生まれてきます。でかいサイズ程、そのサイズに対して、排水量軽量化はし易くなりますので、軽量化したうえで、セールはそう大きく無い、でも、それでも充分速いという事も可能になります。

また、デイセーラーにおけるサイズアップ効果として、これらのセーリング性能とは別の流れもあります。それは、SADR値は既にこれで良いと考え、それをキープしたまま、キャビンの充実を図って、クルージング性能を持たせる事です。例えば、アレリオン41は、SADR23.5あります。しかし、同時にキャビンを充実させています。それをせずにシンプルなままで居れば、SADR値はもっとグ〜ンと上がります。でも、これも考え方次第です。SADR値は充分速い。ならば、サイズアップを内装充実に持って行った。つまり、クルージング性を強化した。

という事で、サイズアップ効果は、スピードポテンシャル、安定性、容易な操作性、クルージング性、どれを優先するかでその効果が分かれていきます。それに対して、オーナー側はスピードはどこまで必要か? 安定性は? キャビンをどう考えるかです。もちろん、それでも全体的にポテンシャルが高い事は言うまでも有りません。

ついでながら、デイセーラーでは、35フィート前後から上になると、だいたい電動ウィンチを標準としてきています。これもシングルハンド前提があるからだと思います。40フィートぐらいになると、全て電動という事も少なくありません。

        

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