第七十話 安定性の確保



      
ハイスピードデイセーラーが上りにおける安定性をどの様に考えているのか興味は尽きませんが、それは兎も角、一般的なセーリングとしては、ある程度の安定性は確保したいと思います。下りのすっ飛んで走るスピード感は確かに面白いのでしょうが、上りもまたセーリングの醍醐味のひとつです。

30フィート前後というのは、デイセーラーにとって程良いサイズ。だから、多くのデイセーラーがこのサイズに最も多く集中しています。シングルとか、気軽さとか、そういう事を考えた時、人によってももちろん違いますが、多くの場合で、このサイズを選ぶ人が多いんだろうと思います。これ以下はもちろん、問題無いわけです。

最近の速いヨットを目指すデイセーラーでは、排水量が2tを切ってきました。船体はもちろんできるだけ軽く造りますが、それでも、必然的にバラスト重量が減少してきます。それが安定性の問題です。もちろん、セール面積とのバランス次第ですが、そんなに排水量を軽くする努力をししたんですから、セール面積を小さくしたら意味が無くなりますから、当然セール面積もそこそこはでかい。(クラシックデイセーラーのCW32は例外です。これは軽くて、でもセールは大きく無い))

この事はフィーリングとか言う問題では無く、ある一定以上吹きますとオーバーヒールしてしまいます。だから、ある程度は安定性を確保しておきたい。もちろん、フルセールでです。まあ、リーフする事もできるわけですから、そんな事気にする必要無いという考え方もあるのかもしれません。確かに、リーフはどんどん活用したら良いとは思います。しかし、それも程度問題です。

ただ、セーリングはパフォーマンスもある程度は必要ですし、そのうえでの安定性をどうバランスさせるか? どの当たりのバランスが自分に合うかという事にもなります。これまで数々のデイセーラーを見てきましたが、独断的かもしれませんが、一般的にはSADR20前後で充分楽しめると思っています。安定性も充分高い。微風側においては、この重さ故に少し不満も出るかもしれません。それなら、第三のセールの活用で解決できます。第三のセールはいずれにしろ、そのヨットがどんなに高いパフォーマンスであっても活用する前提があります。そうじゃないと、微風では所詮微風ですから。

そう考えますと、3枚のセールの展開を前提に考えた時、微風から強風までのセーリングを考えた時、全体のスピード、スポーツ度の違いをどう考えるかになり、一般的にはSADR20前後で充分楽しめると思っています。25前後になりますとよりスポーティーであり、レーサークルーザーレベルです。デイセーラーはシングル前提もあり、しかも、フリーボードが低くスピード感があります。もちろん、もっとスポーティーなヨットを求める方は、25前後でも良いと思います。

SADR30前後は、レースを含めて考えるか、或いは、地域性で、その地が吹かない事が多い地域とか、そういう方には良いかとは思います。ちなみに、一般的な沿岸クルージング艇、30フィートぐらいで、だいたいSADR16とか17とかです。だから、20前後で、フリーボードも低くて海面に近い事を考えますと、そのセーリングも想像していただけるのではないかと思います。

アレリオンの新しい30フィートは、SADR21.4です。これまでの超速いヨットからしたら数値的には低いですが、でも、かなりスイスイ感を感じれます。そして、43.2uのセール面積に1,202kgのバラスト重量を持っています。微風用のセールを含めたら、微軽風から強風まで、面白く、安心して楽しめると思います。ジェネカーで下りをすっ飛んで走るというセーリングとは違うでしょうが、上りを含めたオールラウンドセーリングを楽しめると思います。

        

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