第十話 セーリングとセールの概要



      
セーリングとセールの全体的な概要をイメージとして捉えておくと、実際の操船において、もっと解り易くなるかもしれません。そして、そのイメージを基に舵を切り、セールを創る。イメージ通りのセールを創るには、どの艤装をどう調整すれば良いかと考え、実践からその調整を洗練させていき、イメージの精度を上げていきます。こういうのは、ただ走るより、結構面白い事になると思います。

舵の操作は、兎に角真っ直ぐ走れる事。これに尽きます。意図的に曲がる以外は真っ直ぐという事になります。そして、セールの角度は、その時の風向によって、風に向かえば向かう程、内側に引き込み、風向が後方側になる程、セールを出す事になります。その角度は実践から洗練されて行きますが、取りあえず大雑把にでもイメージをしておくと良いかと思います。真横からの風で、反対舷に45度ぐらいを目安にして、出したり、引いたり。

そして、セールの形のイメージです。セールは角度と形の二つしかありません。その形の方は、ドラフトの深さとリーチの開き(ツウィスト)の二つしかありません。基本セットはトップバテンのリーチ部がブームと並行である事。これにドラフトの浅い、深いがあるだけです。その基本セットからリーチを開いたりして調整しているに過ぎません。そのイメージをしてみて下さい。

ドラフト調整はバックステーアジャスター、アウトホール、そしてカニンガムの三つだけです。そして、角度調整は上りではトラベラー、上り以外ではメインシート、リーチの開きは上りではメインシート、上り以外ではバングとなります。これらの違いをイメージしてみて下さい。

ドラフトを決めたら、操作はメインシートとトラベラーか、メインシートとバングか、この二つしかない事になります。しかも、風向に対して上る時は前者で、上り以外は後者、トラベラーとバングを同時に使う事は無い。そう考えて行けばシンプルです。

これで、セールの角度とリーチの開きを調整する事ができます。上りでは、セールは引き込まれていなければなりません。そして、その角度の範囲はトラベラーのレールの幅の範囲です。角度を変えたい時はトラベラーで調整しますし、リーチを開いて風を逃がしたい時はシートを緩めて開き、この時、ブーム角度も落ちるのでトラベラーで引き上げる。上り以外では、角度を変えたい時はシートで調整し、リーチの調整はバングで調整する。これだけです。イメージしてみて下さい。

要はブームの後ろから見て、ブームが左右に移動したりすれば角度で、ブームの上下移動はリーチの開き具合という事になります。そう考えれば、イメージし易いのではないでしょうか?そして、そのイメージを実践で、調整量を調べる事になります。それで、速くなったり、遅くなったり、大きくヒールしたり、ヒールが軽減されたりします。速くなるのは、それだけ効率が良いわけですから、それを計器で確認して判断できます。

ヒール角度は、風のパワーの大きさと、セール角度です。セールを引き込んでいれば揚力はセールに直角に働くので、船体の横方向に揚力が強く働き、ヒールしますし、セール角度を出せば、揚力の方向が船体の前側方向に向かいますので、ヒール角度は軽減され、揚力が前に向かう分、スピードも速く走れる。
という事は上れば上る程に、ヒールはするし、スピードも遅くなる。でも、感覚的には向かい風でスピード感としてはありますので面白い。これはセーリングの醍醐味でもあります。

セーリング全体の大雑把なイメージを掴んで、実践の操作でそのイメージを洗練させていく。小さく分けて考えて行けば、結構シンプルです。

        

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