第二話 B 42



    サイズアップしても、クルージング機能では無く、もっとハイパフォーマンスを求めるなら、イタリアのB42です。
    でかくなっても、内装はシンプルのまま。装備も最小限。それで、排水量は5,600kg、そのうち、バラストは
    3,000kgもあります。セール面積は100uで、そうなると、SADRは32にもなります。かなりのハイパフォー
    マンスです。
  
    例えば、バラスト重量を、3,000kgとかそんなに重くしなくても、もう少し軽くすれば、排水量が軽くなりますから
    SADR値はもっと高くできます。バラストは2,500kgぐらいでも、悪く無い。しかし、このデザイナーは、多分、
    パフォーマンスとして32を狙い、その代り、より高い安定性を求めたのではないかと思います。しかも、深い
    バルブキールです。サイズが大きくなると、そういう事がし易くなります。もっとパフォーマンスを上げても良いし、
    もっと安定性を高めても良い。サイズアップは、そういう配分が取りやすくなります。

    実は、SADR値は、以前ご紹介したB38とほぼ同じです。でも、違うのは、復元性。B38ではバラスト2,200kgに
    対して、セール面積が85.7uでした。B42になりますと、3,000kgに対して、100uで、キールデザインは
    ほぼ同じですから、単純に、2,200÷85.7=25.7kgとなり、1uあたりのセール面積を25.7kgで支え、
    B42では、3,000÷100=30kg こちらでは30kgで支えている。もちろん、これだけが全てでは無いので
    しょうが、単純に考えても、B42の方が安定性は高いと思われます。つまり、より強い風に対して、フルセール
    で走れる。これがサイズアップする理由のひとつです。また、そこまで安定性を高めなくても、B38と同じレベルの
    安定性を確保するとしたら、もっと速いヨットにする事もできます。この辺りはデザイナーの考えですね。

    因みに、同じ造船所のB30を見ますと、実はSADRは上記二艇とほぼ同じです。でも、バラスト重量が1、150kg
    でセール面積が53uですから、1,150÷53=21.7kg 、1uあたりのセール面積を21.7kgで支えています。
    この三つはSADR値がほぼ同じなので、比較しますと、良く解ります。同じSADR値なら、サイズが大きい方が、
    安定性を高くできる。或いは、安定性が同じなら、サイズが大きい方が、SADR値をより高くできる。でかいヨットの
    二番目のメリットはこういう事になるかと思います。

    B42、当然ながら、操作は電動のスイッチ操作。デイセーラーのサイズが大きくなると、みんなそうしてます。
    シングルという理由もあると思います。サイズがでかいと、パワーアシストが普通になって、返って、操作は楽になる。
    兎に角、イタリアらしい、おしゃれで、スッキリしていて、速くて、美しいヨットです。


  
  
  
  
  
    

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