第九十九話 Wally Nano

ワリーヨットはスーパーヨットとその個性的なデザインでも有名です。その中のひとつにワリーナノという37フィートのデイセーラーがあり、このデザインはHoek氏によってデザインされ、以前ご紹介したエッセンス33やイーグル54のデザインもそうです。さて、このワリーナノ、今後は、ドラゴンの建造をしているDooemrinkという造船所でワリーナノ MkUとして建造する事になっています。船体はオールカーボン/エポキシ樹脂のバキュームインフュージョン工法。

全長37フィートですが、排水量は何と2,600kg 非常に軽い。バラストは1,150kg ドラフトが2.6mで、2.2mと1.5mのオプション設定があるようです。セール面積は75uで、SADRは何と40です。何しろ、排水量が半端なく軽い。オールカーボンですし、もちろん、マストなんかもカーボンです。性能はその辺のレーサー顔負けです。

さて、オールカーボンで非常に軽いのは良いんですが、当然ながら、バラストの絶対重量も軽くなります。そこに75uのセールで、フルセールで速いのは当然ですが、強風になりますと、やはり早め、早めのリーフという事になります。これも考え方次第なんですが、前話のB38の方が、かなり安定性は高いです。でも、フルセールでの速さという意味ではワリーナノの方が速い。中風以下のセーリングを重視するか、或いは、少しでも強風に強い方が良いのか?

結局、前記のアレリオン38、B38、そしてこのワリーナノ37を比較して考えると、フルセールで最も速いワリーナノ、でも、風が強くなったら、リーフすれば良いという考え方と、アレリオン38のように、この三つの中ではフルセールでのスピードは落ちるけれども、強風に対しては最も強い。そして、B38はその中間に当たります。但し、この三つは、パフォーマンスにおいて全てレベルの高い話で、普通はアレリオン38のパフォーマンスで充分楽しめると思います。 B38もワリーナノもレーサーレベルです。でも、みんなシングルを可能にしているのがデイセーラーなわけです。

もはや、スピードはレーサーの専売特許ではありません。全てのデイセーラーはシングルハンドで、セーリングを気軽にスポーツできるように造られています。パフォーマンスの違いは、フルセールで走れるパフォーマンスと、リーフしなければならない強風とのバランスをどこで取るかになります。そして、それをオーナーが選択する事ができます。何しろ、デイセーラーではSADR15から40までありますから、他のジャンルではそんなヨットはありません。

  
  
  
  
  
  

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