第九十九話  忙しさ

今度,リニア新幹線が東京から名古屋まで走るようになるそうで、先日の試験走行では時速600kmをオーバーしました。世界最速です。ますます発展します。これだけ便利になると、我々の生活にゆとりができるかと言いますと、その逆で、ますます忙しくなります。

携帯電話のお陰で、どこでも仕事ができるようになり、新幹線のお陰で、日帰りができる。進化、発展は我々にゆとりなんか与えてくれません。当然です。資本主義、自由競争の世の中ですから。
パソコン使って、電話使って、それも携帯できて、どこでもインターネットができて、どんどん便利になって、どんどん忙しくなります。昔の2倍も3倍も仕事をこなしています。

そういう時代に、あこがれとしてはのんびりどこか遠くへ旅をしたいと思います。ところが、なかなかそれを許してはくれません。ますます忙しいんですから。それで、仕事を引退してからという事になります。では、それからヨット初めて、遠くにクルージングに行く人も居るでしょう。でも、実際は、それが結構大変な感じを持ってしまいます。だから、旅は簡単な新幹線や飛行機、贅沢な場合は豪華客船での旅になる事が多い。

それはそれで良いんだろうと思います。だから、ヨットは、デイセーリングを満喫した方が良いと思うわけです。忙しい人ほど、デイセーリングが良い。忙しいからボートでは駄目ですね。ヨットが良い。何故なら、ボートは釣りでもしない限り退屈です。いくらボートでも、遠くに旅するなら、やはり時間がたっぷり必要なのです。

世の中、便利になる事が進化発展で、その便利さは、我々の時間の使い方をもっと効率化する事になり、つまり、もっと忙しくなる。正確に言うと、一日にこなせる仕事量が多くなる。生産性が高まる。その事によって、暇ができるわけでは無く、そのできるであろう暇に、別の仕事をこなす事になります。効率化が進んで、毎年、丸々一ヶ月ぐらい休めるなら良いんですが、決してそうはなりません。

それは兎も角、世の中は忙しい事にある種の価値観を見出しています。その忙しさの中に居るからこそ充実感を感じるのかもしれません。さらに、その忙しい合間にヨットに関わるからこそ、ヨットの価値観も高まっていくのかもしれません。

そういう中で、近場でできる事はますます重要になると思います。デイセーリングを楽しむ。限られた時間だからこそ充実感も湧いてくると思います。世界でデイセーラーが広がっていく理由も、ここにあるのではないかと思います。

週末に仕事場からマリーナへ直行して、ちょっと夕暮れのセーリングを味わってくる。そんなビデオがありました。今度の日曜に、ローカルのレースに参加する。でっかい動かないヨットを尻目に、夏の夕方から、奥さんと二人でワインを1本持ってピクニックに行く。久しぶりに合った古い友人を誘って、セーリングを楽しむ。孫を連れてセーリングを教えてあげる。夜、ヨットに泊まって、翌朝、早朝セーリングを楽しむ。午後は、また別な事ができます。デイセーリングにもいろんな使い方をする事ができます。

一年間の休みをトータルしますと、結構あります。しかし、飛び飛びの休みです。でも、その飛び飛びだからこそ充実した休みにする事もできます。まとまった休みは年に1回とか2回程度。だから、その休みを充実させる事ができます。毎日が日曜になったら、これがなかなか難しい。だから、仕事引退しても、何かしたくなります。ロングの旅に出るか、或は、違う何かをしながら、デイセーリングを遊ぶか?

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