第七十六話 特化したヨット

スポーツカーはそのドライビングに特化した車です。それが広がってきたのは一般社会において、車が浸透したせいで、二台目を持つ事に不自然さが無くなったからだと思います。二台目の車には、それがどのように生活に役にたつかという要素は排除できる。だから、二人乗りのスポーツカーで、荷物もあまり詰めなくても構わないという考え方も広がっていきます。かっこ良くて、美しくて、速いのが面白いとなる。そのスポーカーに当たるのがデイセーラーです。

ところが、ヨットに関しては浸透度が低いので、なかなかそうはいきません。もちろん、二艇目なんて事は有り得ない。でも、考えてみると、ヨットの実用性って何でしょう? はなっから、そんな物は必要無い。生活必需品でも無いし、荷物運ぶわけでも無いし、人を載せて運ぶわけでも無い。純粋な遊びとして存在しています。

だったら、それは車の様に、人が二台目として、自分の遊びとして考えるのと同じであります。車だったら、二台目にキャンピングカーかもしれないし、スポーツカーかもしれない。奥様用ではありません。自分用です。

旅先にはホテルや旅館があります。温泉にも入れる。ご馳走にもありつける。ゆっくり暖かい布団で寝れる。そう考えると、何もキャビンピングカーで無くても、スポーツカーでも良いとも考えられる。それに普段のデイドライビングに面白い。

それはヨットも同じです。旅に出て、旅館やホテルに泊まるとしたら、何もヨットのキャビンなんかそう重要では無い。重要では無いと思った途端に、セーリングに気軽さが出て、しかも、面白いセーリングを味わう事ができる。日常にドライブを楽しみ、たま〜にどこかに行っても、ホテルを利用するなら快適でもあります。

デイセーラーが何故デイセーラーかと言いますと、長旅用では無いからです。多くの荷物を積み込めるようにはなっていない。キャビンで何日も泊まる事を想定してはいない。でも、デイセーリングを繰り返して、ホテルを利用すれば、旅もできます。スポーツカーと同じです。

でも、本来は、セーリング感を楽しむ為のヨットです。それに特化したヨットです。その選択において、ヨット文化が成熟するまで待つ必要は無いのです。ヨットははなっから遊び用なのですから。要は考え方次第です。但し、その考え方においては、成熟を待たなければならないのかもしれませんが、でも、誰もが待つ必要は無いのです。

成熟度が高い欧米は兎も角、日本においては、まだまだデイセーラーの浸透度は低い。でも、こんなに使いやすい、面白いヨットは他に無いと思っています。

スポーツカーって、楽しそうだし、面白そうだし、なんだかワクワクします。デイセーラーも同じ匂いがします。遊びなんですから、ワクワクしないと嘘でしょう。

キャビンは人を惑わす。そのキャビンの罠にはまると、かえって楽しめなくなるかもしれません。ヨットにおいて、セーリングに勝る面白さは無いと思うのです。デイセーラーはそのセーリングに特化したヨットです。

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