第七十一話 既成概念

デイセーラーは近場でセーリングを堪能する。でも、それは、キャビン施設が、長期に過ごす様にはデザインされていないから。それだけの事です。長期だったら、広いキャビンが欲しいし、水も燃料もたくさん欲しい。たくさんの荷物を積み込むスペースも欲しい、いろんな設備が欲しい。でも、デイセーラーはシンプルです。だから、デイセーラーへと特化し、その代わりグッドな走りを提供しています。

でも、昨年、29フィートのデイセーラーで太平洋を横断してきた。デイセーラーだって、それができる。ただ、設備的にしんどいから、普通はやりませんが、ヨットの能力としてできるという事です。
サンフランシスコから横浜まで、南回りでノンストップでした。デイセーラーだって、こんな事もできると証明してくれました。デイセーラーでも、外洋で頼りになる。それは船体がしっかりしているし、重心も低い。走るには良いのです。でも、外洋艇の方が楽だという事です。

外洋艇でデイセーリングを楽しむ事もできます。でも、それ向きでは無い。よって、セーリングは違うものになります。それぞれ可能だけれど、向き不向きがあります。

普通は近場でセーリングを楽しむのが本道です。だからこそ、セーリングの深さを求めた方が面白い。それをシングルで気楽に楽しもうというコンセプトです。

ティラーよりラットの方が良いという方は多い。けれども、案外ティラーも悪く無い。舵の角度が明確に分かりますし、舵からダイレクトに伝わってくるフィーリングもあります。最近は、スターンを絞っていないのが多く見られ、幅広になり、ツィンラットが流行っている。幅広だと初期ヒールを抑える。でも、幅が広いと、シングルでは手が届かない範囲が広くなります。

デイセーラーはスリムです。スリムな幅は、初期ヒールしやすい。初期ヒールはキールの効果が小さいので、船体の幅が影響します。しかし、風が強くなって、ヒール角度がもっと大きくなると、横に張り出した重いキールが効果を発揮してきます。だから、バラスト重量は重い。そして、比重の重い鉛キールを採用しています。

鉛は比重が重いし、鉄より柔らかいので、万一ぶつけた時でも、鉛が削れて、ショックを和らげる。
自慢はできませんが、二度経験した事があります。どちらも、サンダーで削って、形を整えて、終了程度でした。いずれもキールボルトに影響は無かった。

そう言えば、二度目の時は、鉛が削れて、その傷はたいした事は無かったのですが、でも、キールに微妙な振動を感じました。上架してみたら、この程度? というぐらいの傷でしたが、サンディング後はスムースになりましたので、繊細なもんだな〜と感じた次第です。だから、船底磨きも重要ですね。フィーリングにかなり影響します。

デイセーリングするなら、鈍いヨットより、鋭敏なヨットの方が面白い。過ぎても困りますが。舵を切った時のフィーリング、シート操作時の変化、等々、鋭敏だからこそ反応を楽しむ事ができます。
有名なある方、デイセーラーをピクニックボートと言った。それは認識不足。今日のデイセーラーはピクニックももちろん良いですが、その範疇には留まっていない。セーリングを楽しむ為にデザインされ、建造されています。

市場が成熟していきますと、いろんな使い方が生まれます。それに対して、デザイナーや造船所が新しい物を出してくる。このデイセーラーなんか典型だろうと思います。ピクニック程度なら、ヨットは何でも良いかもしれない。もっとエキサイティングに、気軽に、セーリングを楽しめるヨット、でも、レーサーでは無い、だから、どんなにハイパフォーマンスであってもシングルハンドを前提にしている。そのこころは、セーリングをもっと身近に感じる処にあるかと思います。だから、スポーツカーのコンセプトと同じだと思います。

旅をするならキャンピングカー、ホテルに泊まるならセダン、ドライブを楽しむならスポーツカー。
ロングの旅を楽しむならクルージング艇、セーリングを楽しむならデイセーラー、ホテルに泊まるならデイセーラーでも良い。

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