第五十一話 七難隠す

色白は〜と言われますが、ヨットでも、美しいスタイルで、美しくメインテナンスされていると、もうそれだけでうっとりします。多少の難があっても、目をつぶりたくなります。ちょっとした難点があっても、何となくそれさえも自慢気に話したりする事もある。でも、それは自分が価値を置く部分に対して満足していて、難点を言うのは逆説的な自慢話かもしれません。気に入っているからそう言えるのかもしれません。

美しさはヨットにとって、とっても重要な要素のひとつだと思います。その美しさとは全体と部分、大きなヨットのプロポーションバランスが良くなるのは、キャビンの天井の高さを確保するに、ヨットが小さかろうと同じで人間の背丈が考慮され、小さいとどうしてもずんぐりした感じにならざるを得ない。でも、サイズをでかくすると、それが解消されていく。

そこで、デイセーラーは思い切って、天井の高さを確保する事にこだわらなかった。それはプロポーションを重視しての事か、或は、単に重心を低くする為なのかは解らないが、多分、その両方なのでしょうが、兎に角、サイズは小さくてもプロポーションバランスは良い。

美しさは全体のプロポーションのバランスがあり、そのうえで、各部の造りの美しさになっていくと思います。もちろん、ヨットは走らせるものですから、その機能性も重要です。その機能性とは、そのヨットをどのように使うかに寄ります。最近のクルージング艇は、兎に角、キャビン拡大に走ってきました。部分的にはは美しいかもしれませんが、全体プロポーションとしては、私見ですが、あまり美しいとは思えない。まあ、個人的好みの問題ですので悪しからず。

デイセーラーはキャビンが狭いので、キャビン重視のクルージングとしては、機能的では無いかもしれないが、はなっから、キャビンを重視しては居ない。そこにあるのは、ソファーやバース、それにトイレぐらいか。ヨットによってはギャレーも無い。その代わり、美しいヨットを美しく走らせ、グッドフィーリングを味わうのが、このデイセーラーのコンセプトです。それ以外は、あまり重視していない。もちろん、デイセーラーでも、サイズが大きくなると、ギャレーがあったりもします。天井の高さも確保される。でも、その充実度から言えば、クルージング艇には適わない。目的が違います。

デイセーラーの目的は、気軽さと、シングルと、気持ちの良いセーリングにあります。そして、もちろん、美しい事。クルージングは近場程度。でも、旅先でホテルに泊まるなら、長期でも考えられますね。個人的にはロングをしようとは思いませんが。そう言えば、昨年、アメリカから太平洋をノンストップで横断してきたデイセーラーもありました。でも、本来はそういう目的で建造されているわけではありません。

美しいヨットを、美しく走らせる。デイセーラーはそういうヨットです。エアコン、ありません。キャビン、狭いです。キャビン内設備もシンプルです。だから良いんです。これらは、デイセーラーにとっては難点では無いのです。逆説的自慢話です。

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